2000年5月7日(日)

オーストリアの通告は逆効果

                    

クラウディア・ケマー

国民投票の通告はEU外相会議において苛立ちを引き起こしたのみ  制裁の早期解除の見込みなし

AP通信員クラウディア・ケマー

フルナス/ アゾレス諸島(AP)

 オーストリアは余計なことを行ったようだ。14のEU諸国がオーストリア政府に対してとっている外交凍結が早期にひっそりと解かれ、正常化するとの見通しは、オーストリアが国民投票の実施を声高に通告したことを受けて、週末のアゾレス諸島でのEU外相会議において潰え去った。それでもオーストリアのベニータ・フェレーロヴァルトナー外相は、オーストリア連立政権のEUに対する忠実さを中立機関に監視させるという提唱を行い、数カ国から検討を引き出した。

 しかしオーストリア政府が最後通牒としてつきつけた6月末の制裁解除は決定されなかった。ドイツのヨシュカ・フィッシャー外相は「早期解決を望むなら、このテーマはむしろ静かに持ち出さねばならない」と述べて、オーストリアの腕ずくの外交手法を諫めた。フェレーロヴァルトナー外相は、最後通牒と国民投票が苛立ちを買ったことを認めた。

 「オーストリアは本当に事態の進展を望むなら、もう少し上手に振る舞えたはずだ」と代表団は漏らした。「保守のオーストリア国民党(OVP)と右翼大衆主義の自由党(FPO)から成る連立政権は、要求の出し方が賢明とは言えない。しかし事態はひそかに建設的な方向で展開している」とある外交官は述べた。主催国ポルトガルのジェメ・ガマ外相は「強引に解決を迫ろうと外相会議を戦略的に利用した」と立腹した。

 スペイン、イタリア、ギリシャ、デンマークおよびフィンランドは制裁の緩和に賛意を示す一方、ベルギーのルイ・ミシェル外相は断固たる態度を変えなかった。これに対しスペインのラモン・デ・ミグエル外務次官は、「オーストリアが欧州連合の政治的原則を遵守しているかどうか、監視する体制がとられれば、スペインは両国間の制裁措置を終結させる用意がある」と述べた。イタリアのラムベルト・ディーニ外相も、制裁が続けばオーストリアにおける反ヨーロッパ的空気が高まることを警告した。

 ゆっくりとした制裁緩和に向け、フランスのユベール・ヴェドリヌ外相も独自の手法で慎重にシグナルを送った。1月末のオーストリア右翼連立政権の誕生以来、初めて各国の外相が土曜日の非公式会議の席で集合写真に収まった。しかしヴェドリヌ外相は、カメラマンがシャッターを押すその瞬間、緊急の電話を受け、席を外した。ガマ外相のスポークスマン、フェルナンド・ネヴェス大使は、ヴェドリヌ外相が集合写真に加われなかったことを残念に思っている、と伝えた。ヴェドリヌ外相の願いで日曜日にあらためて集合写真が撮影された。ヴェドリヌ外相は喜色満面のフェレーロヴァルトナーの隣でこれみよがしにポーズをとった。

ヨーロッパ部分集合をめぐるビジョン論争

 ガマ外相は非公式外相会議の成功を心配して、オーストリア問題の取り扱いをつとめておさえ、「これは14カ国の問題であり、外相会議の問題ではない」と繰り返し強調した。ガマ外相が気に懸けていたのは、EUのバルカン政策とその資金調達に関する課題討議に加え、12カ国の新規加盟という拡大を控えた欧州連合の長期的な改革をめぐる自由討議であった。討議の際、各国外相は、現在の政府間協議の枠を越え、さらなる展望を追求した。目下行われている政府間協議ではもっぱら過去の改革論議の置き土産がテーマとなっている。すなわち欧州委員の数の制限、欧州理事会における票の再分配、および多数決決定の拡大である。6つのEU創立国のうちとりわけフランスが、テーマごとに、その希望と用意のあるEU諸国間で一層協議を深めることを要求した。

 早くもフランスのヴェドリヌ外相が12月に終結する政府間協議で「速度の異なるヨーロッパ」に弾みがつくことを期待しているのに対し、ドイツのヨシュカ・フィッシャー外相は2002年の新たな改革条約の発効後に、柔軟な協力関係を取り決める機会を見ている。主催国ポルトガルのガマ外相もテンポを上げることを求めている。「我々は機会の窓を開くことにより、現在進められている改革をとり残された問題の改革に終わらせず、本質的な改革に発展させ、新たな態勢をもって将来の課題に対処しよう。」