2001年11月26日(月)16:47

オーストリア自由党はテメリン原発問題でチェコのEU加盟に拒否権を発動すると威嚇

ウィーン(ロイター)

チェコのテメリン原子力発電所の安全性をめぐる論争で、右翼大衆迎合政党のオーストリア自由党(FPOe)所属の政治家は月曜日、あらためてチェコのEU加盟を阻止すると脅しをかけた。同原発が操業停止されない場合は、オーストリアはチェコのEU加盟に対して拒否権を発動すべきである、と自由党の代表者は要求した。来年1月にテメリン原発に反対する国民請願が同党の組織により開始される予定である。これに署名することにより、国民は隣国チェコのEU加盟に対する拒否権発動の要求を支援できる。オーストリアの中道右派連立政権はテメリン原発をめぐる論争では態度が分かれている。自由党の連立相手である保守の国民党(OeVP)は、この問題に関して拒否権による威嚇を行うのは無意味であると表明した。

自由党のマリーア・ラオホカラート書記長は、保守党はテメリン原発に関して最大限の安全性を確保するべく交渉にすべてをかけていると述べた。しかし、感情を揺り動かすことは対立関係の硬直化を招くだけだ。加えて、テメリン原発は国民請願や拒否権では阻止することができない。このような主張を掲げる者は、偽りの期待を抱かせるのである。たとえチェコがEUに加盟できなかったとしても、テメリン原発が稼動することには変わらない、とラオホカラート書記長は主張した。

ウィーンの自由党のヒルマル・カバス代表は、拒否権はチェコに原発を断念させる最後の手段であると述べ、もしチェコが「オーストリアが本気である」と気づいたならば、EU加盟を選び、テメリンを断念する決断を下すであろう、と付け加えた。拒否権の脅しは副首相で自由党党首のスザンネ・リースパッサーも支持しているとカバス代表は述べた。

テメリン原発に反対する国民請願に100,000人以上のオーストリア国民が署名したならば、オーストリア議会はこの請願を審議にかけねばならない。しかし、70年代末に国民投票により原子力エネルギーの生産を否決したオーストリアでは、テメリン原発に反対する署名はこの数をはるかに上回るものと見られている。そうなれば政府に対する圧力も一層高まることになろう。

オーストリアが安全性を懸念している国境近くのテメリン原発に対する対応では、ここ数週間で連立政権内の不一致が明確になった。ヴォルフガング・シュッセル首相(国民党)は、チェコに対する圧力手段として自由党が主張する拒否権の要求を拒否した。政治アナリストはテメリン原発をめぐる争いを、2000年2月の政権発足以来、連立の最大の試練と見ている。

原題:FPOe droht Tschechien wegen Temelin mit Veto gegen EU-Beitritt