2001年11月30日(金)14:11

オーストリアとチェコはテメリン原発をめぐる紛争に終止符

シュッセル首相とゼマン首相は安全保証措置で合意‐ハイダー前自由党党首は連立解消を警告

ブリュッセル/ ウィーン(AP)

テメリン原発をめぐるオーストリアとチェコの紛争はひとまず調停された。両国政府はブリュッセルにおいて、チェコの同原発に対する安全保証義務を盛り込んだ共同声明に合意した。だが、早くも金曜日には新たな軋轢が生まれた。イェルク・ハイダー前自由党党首が、合意された妥協案に懐疑的な発言を行い、ヴォルフガング・シュッセル首相率いる国民党(OeVP)との連立を再考すると述べたのである。

オーストリアのAPA通信によれば、ハイダー前党首はクラーゲンフルトにおいて、自由党は「EUの圧力による合意には」承服しない。「たしかにチェコを動かし譲歩を引き出したことは成功である」。しかしこの成果はまず政権内で分析する必要がある。「その後解決案が見つからねば、この連立も解消されることになろう」とケルンテン州の知事を務めるハイダーは述べた。ハイダーはこのブリュッセルの結果を国民投票にかけるよう提案した。

シュッセル首相とチェコのミロシュ・ゼマン首相は、木曜日の晩、数時間におよぶ交渉の末この妥協案に合意した。この協議の仲介に当たったのはEU拡大委員ギュンター・フェアホイゲンであった。この声明では、チェコに対してテメリン原発の安全性に関しオーストリア当局と広範な情報交換を行うことなどを義務づけている。同時に両国は共同で、代替的なエネルギー確保の方策を模索するとしている。しかしオーストリアの求めた原発の操業停止についてはこの文書ではもはや触れられていない。

シュッセル首相は共同声明を「国民の利益に適うと政府が責任を持てる、きわめて理性的な成果」と評した。ゼマン首相は、これまでテメリン原発をめぐる紛争はオーストリアとチェコの関係に暗い影を落としていた。これで暗雲は消え去った、と語った。

チェコのEU加盟の障害が取り除かれる

加えてオーストリア政府はこの声明において、チェコの欧州連合加盟の計画を阻止してはならないと定められた。チェコの加盟交渉は来年末には完了の予定である。問題のエネルギー分野は、テメリン原発をめぐる紛争のため、これまで交渉開始が見送られてきたが、これで障害が取り除かれたことになる。シュッセル首相とゼマン首相の間で合意された共同声明は、欧州裁判所に安全基準の遵守を告訴できるよう、付録としてチェコのEU加盟文書に採録されることになる。しかしこれにはなお他のEU14ヶ国の承認が必要である。

テメリン原発はチェコとオーストリアの国境から50キロ離れたところに位置する。たびたび安全上の不備が露呈したため、オーストリア政府は同原発の停止を強く要求していた。しかし停止可能とは誰も考えていなかった。第一にチェコは1100億コルナ(約15億マルク、30億ユーロ*)の設備投資を行っており、第二に同原発はチェコのエネルギー供給の主役を務めるとされているからである。2003年にテメリン原発は優に20年に及ぶ建設期間を経て完全な運転が可能となる予定である。オーストリアは1978年の国民投票で原子力エネルギーの利用を否決している。

原題:Wien und Prag legen Streit um Temelin bei
Schuessel und Zeman einigen sich auf Sicherheitsgarantien - Haider droht mit Ende der Koalition

*訳注:この数字には誤りがある。1100億コルナは12月4日のレートで33,2億ユーロ、64,9億マルク。下記の為替レートのページを参照のこと:
http://de.finance.yahoo.com/m5?a=158%2C54&s=DEM&t=EUR