2001年4月20日(金)16:15
ワルシャワ(ロイター)
欧州連合(EU)の拡大協議で、ドイツとポーランドの間には大きな波が立っている。最大の加盟国と最大の加盟候補国であり、変転する歴史で数百年来結ばれてきた隣国同士は、過去の重荷を抱えている。多くのドイツ人は、2002年末までに予定されている加盟協議の完了後に安価な労働力が大量に押し寄せるのではないかと恐れている。その一方、多くのポーランド人は、シュレージエン地方がドイツ人に奪い返されるのではないかと危惧している。「ドイツ人の問題は関心の欠如であり、ポーランド人の問題は強烈なコンプレックスである」と、コンラート・アデナウアー財団のローラント・フロイデンシュタインはワルシャワにおいてこの状況を分析する。
「ドイツ人はもう少し傲慢さを抑え、ポーランド人はもっと活動的になって、一層密接な協力関係を模索する必要がある」とワルシャワ国際関係センターのマレク・チホツキは判断する。
しかしドイツとポーランドの関係はベルリンの壁の崩壊以降、80年代に比べはるかに改善されている。ドイツはもはや分断されておらず、ポーランドも民主主義国家となった。両国のオーデル・ナイセ河国境は正式に承認され、もはや異論の余地はない。だが識者の見るところ、両国にはいまだ古い固定観念が民族心理の深いところに根付いたまま残っているという。すなわち主人と下僕、勝者と敗者である。どちらも、EUが計画通り2004年以降拡大を始めるならば、克服されねばならないのである。
ドイツ人とポーランド人は加盟協議の結果を国内でも承認する必要がある。1998年から赤と緑(社会民主党と緑の党)の連立が政権についているドイツでは次の選挙は2002年まで行われない。一方、ポーランドでは保守系の少数派政権が今秋にも選挙で民意を問われる。ポーランドはそれに加えてEU加盟の国民投票を行う意向である。
ドイツのゲルハルト・シュレーダー首相は、ポーランドから押し寄せる安い労働力に対する国民の不安を抑えるために、7年間の移行期間設け、ポーランド人の移動の自由を制限する提案を行っている。この期間はポーランド政府にとっては長すぎる。しかし欧州委員会はこの原案に基づいて協議を進めている。
他方、ポーランドでは旧ドイツ領の西プロイセン、東プロイセンおよびシュレージエンの零細農家が、かつての大地主の裕福なドイツ人子孫が土地を買い漁るのではないかと懸念している。この問題に関し、ポーランド政府は18年間の土地取得特例規制を要求しているが、この期間はドイツ政府にとっては長すぎる。ドイツ政府はせめて10年間でなければ受け入れられないとしている。
4000万人の人口を擁し、現在加盟協議を行っている候補国の中で最大のポーランドが含まれなければ、第一陣の拡大も意味が薄れよう。この点で多くの識者の見解は一致している。その一方でドイツ政府は、ポーランドを2004年にヨーロッパの舟に乗り込ませるためには、農業分野と地域助成の面で多額の支出を迫られることも承知している。しかも8000万人の人口を抱えるドイツはここでも最大の支払人となろう。多くのドイツ人はこれに関連してドイツ再統一で莫大な費用がかかったことを指摘する。
秋の再選に不安要因を抱えるポーランド政府はEUとの協議で強硬な姿勢をとった。これは他の小さな中東欧諸国のEUとの協議には有利に働くことになった。しかしポーランドにおけるEU加盟の承認度が現在の55パーセントからさらに下がるようなことがあれば、EU拡大全体が危機に瀕すことになると作家トーマス・ウルバンは考える。このワルシャワ在住の作家兼ドイツ・ポーランド関係史のクロニストは、「ポーランドが第一陣に入るか、さもなくば他の国々が待たねばならないかである」と彼の確信を述べた。
原題:FEATURE - Die EU-Erweiterung als deutsch-polnisches Problem
Von Douglas Busvine