2009年4月23日(木)10:05

ヨーロッパの統一疲れ

 −背景解説−

ブリュッセル(AP)

ミラン・ホラチェク欧州議員にとって、2004年5月1日のEUの東方拡大は極めて特別な体験であった。彼は1968年の「プラハの春」の後、祖国チェコからドイツに逃れ、1990年に帰国するとヴァーツラフ・ハヴェル大統領の顧問となった。その後、プラハのハインリヒ・ベル財団の代表としてチェコのEU加盟準備を手助けした。チェコなど東欧8ヶ国の2004年5月のEU加盟は、その数週間後に緑の党の欧州議員に選出されたホラチェクにとっては、夢の実現であった。

しかし今日ではEU加盟に対するチェコ国民の評価は分かれている。昨年12月の世論調査では、国民の46パーセントしかEU加盟を評価していない。ヴァーツラフ・クラウス大統領も名だたる反EU論者であり、欧州連合をソビエト連邦に比較したことすらある。かつての反体制派のホラチェク議員にとってこれは許し難い。「暴力によるソ連の支配を、27ヶ国に拡大した共同体における共生の方法や国境撤廃の仕組みに関する合意と比べることはできない」とホラチェク議員は語った。

しかしクラウス大統領の発言に賛同する人も多い。ホラチェク議員は、国民の一部にEU加盟から5年を経てもなお完全に西側並みの生活水準に至っていないことに対する失望があるのではと考えている。チェコ人は伝統的に東の隣国より「数歩先を行っている」が、「ドイツと較べると、まだ他の国ほど追いついていないことに気づき、その都度失望感を味わうのだ」という。

EU拡大に対するドイツ、フランス、オーストリアなどの懐疑

拡大から5年を経て、ある種の醒めた雰囲気がヨーロッパ全体に漂っている。これは定期的にEU市民の気分を測る、いわゆるユーロバロメーターにも明らかである。昨年12月の最新の調査では、EU東方拡大によりEUが強化されたと考える人々は48パーセントに留まり、36パーセントはむしろEUが弱体化したと見ている。ドイツ、オーストリア、フランス、ベルギー、ルクセンブルクではEUが弱体化したと考える人々が過半数に上っている。

ポーランドのヤチェク=サリュシ・ヴォルスキ欧州議員は、EU拡大を「スケープゴート」に仕立て、社会問題や企業移転の責任を押し付けているとして、西側の政治家を非難した。「しかしEUは拡大により、経済面でも世界的なプレゼンスの面でも強化されたのだ」。それゆえEUは新規加盟を希望する国々に扉を開けておく必要がある、と保守系のサリュシ・ヴォルスキ議員は述べた。しかし一方で議員は、ただし現時点ではEUは「政治的にも心理的にも財政的にも」新規拡大ラウンドに向けた準備が整っていないと認めた。

3年間で15ヶ国から27ヶ国に

EUは、2004年5月1日の10ヶ国の新規加盟および2007年1月1日のルーマニアとブルガリアの加盟をまず消化する必要がある。なぜなら27ヶ国に拡大したEUは15ヶ国の頃と較べて、交渉を通じて妥協点を見つけ、決定を下すことが著しく困難になっているからである。1990年代に欧州議会議長として東方拡大の準備に携わった社会民主党(SPD)のクラウス・ヘンシュ欧州議員は、「欧州連合は以前より不均質になった」と語る。

とりわけロシアとの関係に対する評価ならびに多くの経済的、社会的問題に関しても、西欧と東欧の人々の間で意見の隔たりがある、とヘンシュ議員は語り、具体例としてサービス産業のガイドラインをめぐる難しい交渉を挙げた。この問題ではドイツなどの既加盟国が社会的ダンピングにつながると警戒しているのに対し、東欧諸国は豊かな西側から新たな客を獲得する好機と捉えている。

トルコの加盟には社会民主党内でも異論

ヘンシュ議員はここ数年の経験から、EUが自らの拡大に境界線を引く必要があると考えている。「欧州連合は破裂するほど拡大してはならない」。クロアチアは加盟するだろう。また他の旧ユーゴ諸国とアルバニアに対して加盟展望を与えることも正しい。しかし「私の個人的見解はそれでおしまいだ」。

ヘンシュ議員はこの発言により、ウクライナやグルジアのみならず、トルコの加盟についても反対した形になる。しかしこれは所属する社会民主党の基本方針と矛盾する。トルコのEU加盟の問題は「その地理的状況にもよる。トルコとイラン、トルコとイラクの問題、クルド問題など、欧州連合はさまざまな紛争を抱え込むことになる」とヘンシュ議員は警告する。

しかし緑の党のホラチェク議員の見解は異なる。「基本的には、加盟基準を満たすすべての欧州の国に対して、EUへの加盟が認められねばならない」。とはいえそれを達成できるのは当面はクロアチアだけだ。「たとえばウクライナの政治的状況は、今後10年あるいは15年は不安定なままであろう」、とホラチェク議員は語った。

原題:Das vereinte Europa ist muede -Hintergrund




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