2011年4月26日(水)15:51

イタリアとフランスはシェンゲン圏の国境検査復活を求める

AFP

北アフリカからの数万人の難民の漂着を受けて、イタリアとフランスは少なくとも一時的にヨーロッパでの国境検査を認めるよう求めている。イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相とフランスのニコラ・サルコジ大統領はローマでの首脳会談の後、シェンゲン協定の修正を要求した。シェンゲン協定はヨーロッパの数多くの国々において旅券審査のない旅行の自由を保証している。これに加えてフランスは次期欧州中央銀行総裁の候補者としてイタリア銀行のマリオ・ドラギ総裁を支持する意向を表明した。

イタリアとフランスは、北アフリカからの難民の取り扱いをめぐって不協和音が生じたが、これにより共同歩調を取った形となる。ローマで開かれた緊急首脳会談では、サルコジ大統領とベルルスコーニ首相の欧州委員会宛ての共同書簡が発表された。両首脳はこの中で、シェンゲン加盟国の国境、とりわけ「共同の外部国境の検査において著しく支障のある場合」に国境検査を再開する可能性を求めている。書簡は欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長とEUのヘルマン・ファンロンパウ常任議長に宛てられている。

イタリアとフランス両国政府の要求の発端となったのはEUとシェンゲン圏の南の隣国における政変であった。北アフリカ諸国でおきた革命により、イタリアは難民の大量流入に見舞われた。地中海に浮かぶイタリアのランペドゥーサ島にはこの間およそ26,000人の難民が漂着したが、その大半はチュニジア人である。

イタリアの当局はチュニジアからの難民に対して滞在許可証の発行を開始したため、フランスとの間で対立が持ち上がった。難民はこの滞在許可証を使えば原則として他のシェンゲン協定加盟国への入国が認められる。そのためフランス語を話す多くのチュニジア人はフランスに向かった。これに対しフランス政府はイタリアとの国境を封鎖する措置に出たため、今度はイタリア政府の苛立ちを招いた。

そこでベルルスコーニ首相とサルコジ大統領は目下の「尋常ならざる状況」に鑑み、共同でシェンゲン協定の修正ならびに加盟国間の国境検査再開の許可を求めた。シェンゲン協定は欧州統合の要と見なされており、最近加盟したリヒテンシュタインを含め、26ヶ国がシェンゲン圏に加わっている。これによりおよそ4億人の人々が旅券検査なしにイタリアからノルウェーまで、またポルトガルからポーランドまで移動することができる。

ベルルスコーニ首相とサルコジ大統領は、共同の外部国境への「圧力」はすべての加盟国に影響が及ぶと共同書簡で警告した。両首脳は6月のEU首脳会議で「現在の問題に対する回答として具体的な決定」を導く必要があると求めた。これにはEUが地中海の南の国々と協力することや、とりわけ多くの難民が漂着しているイタリアやマルタのような加盟国に一層の財政支援を行うことなどが含まれるという。加えてイタリアとフランスはEU国境警備隊Frontexの強化を求めた。

共同書簡で両国はまた共通のEUの難民手続きを訴えた。従来の規定では、難民が最初に入国したEU加盟国が難民への食料提供や難民申請に責任を持つ。

ドラギ氏が欧州中央銀行総裁に就任すれば、イタリアにとって「たいへん良いメッセージ」となろう、とサルコジ大統領は語った。ドイツ連邦銀行のアクセル・ヴェーバー総裁が退いてから、イタリア銀行のドラギ総裁はジャンクロード・トリシェ欧州中央銀行総裁の有力な後任候補と目されている。トリシェ総裁は今年10月に8年の任期を終える。

原題:Rom und Paris wollen wieder Kontrollen im Schengen-Raum




ホームへ戻る