2000年8月27日(日)  16:42

オーストリア政府はEUの東方拡大に関し意見が分かれる

ウィーン(ロイター)

 保守と右翼大衆主義政党の構成するオーストリアの連立政権内では欧州連合(EU)の東方拡大の計画に関して明らかに不統一が見られる。右翼大衆主義の自由党(FPO)出身の国防相ヘルベルト・シャイプナーは雑誌「フォルマート」(月曜版)に対して、チェコとスロヴェニアが1945年以降に出されたドイツ人の財産没収と放逐を定めた布告を撤回しない限り、両国をEUに受け入れるべきではない、と述べた。これに対し、保守的な国民党(OVP)出身のベニータ・フェレロヴァルトナー外相を長とする外務省は、当の布告とスロヴェニアおよびチェコの加盟条件との間にはなんら関連がない、と言明した。

 シャイプナー国防相はこの見解に異議を唱える。「両国はまず、数十万人の殺人と放逐の根拠となった法体系の一部の章句を抹消すべきである」と「フォルマート」誌は国防相の発言を紹介している。「もしチェコとスロヴェニアの過半数の国民が布告の撤回に賛成しないのならば、両国はEU加盟には時期尚早である」とシャイプナーは述べた。

 チェコ政府は第二次大戦後いわゆるベネシュ布告により数百万のズデーテンドイツ人の放逐と財産没収を公認した。チェコはこの布告を、公式に撤回こそしていないものの、もはや効力を持たない同国の法制史の一部と見なしている。かつてユーゴスラヴィアの一部であったスロヴェニアにおいても第二次大戦後ドイツ人の財産没収が行われた。

 自由党の複数の政治家が引き起こしたEUの東方拡大をめぐる論争は、オーストリアに対するEUの制裁がまもなく解除される見込みがあるという報道と時期を同じくしている。EUの委託を受けた賢人委員会は、「ヴェルト日曜版」紙の情報によれば、オーストリアに対する制裁の解除を勧告する意向であるという。同紙が「情報通のEU筋」の情報として伝えるところによれば、賢人委員会は金曜日に最終的決定を下す意向であるという。同委員会が制裁の解除に賛成するのは疑いの余地がないと伝えている。賢人委員会はオーストリアにおける人権の状況と右翼大衆主義のオーストリア自由党(FPO)の発展を調査する任務を負っている。オーストリアのパートナーであるEU14カ国は2月の自由党の政権参加以降オーストリアに対する外交関係を制限している。

原題:Regierung in Wien uneins ueber EU-Osterweiterung