2001年12月16(日)12:46
ブリュッセル(ロイター)
欧州連合(EU)は共同の憲法へ向けて舵を切った。欧州連合の各国首脳は、一部には暴力的な抗議運動も伴った週末のラーケン首脳会議において、改革会議Reformkonventの設置で合意した。この改革会議はフランスの元大統領ヴァレリー・ジスカールデスタン議長のもとに、EUの歴史上初めて欧州連合の改造に向けた提案を作成することになった。副議長にはイタリアのジュリアーノ・アマート前首相とベルギーのジャンリュク・デハーネ前首相が就任する。機構改革によりEUは拡大後も行動能力を保持する意向である。第一陣として10ヶ国が2004年以降の加盟に向け準備が整う可能性があるとされた。また、新たなEU官庁の所在地選定をめぐり一部に白熱した論争が起きたが、この争いを調停できないまま、首脳会議は閉幕した。
「その名に値する憲法草案が作成されれば、私には理想的な成果と考えられる」とドイツのゲルハルトシュレーダー首相は、来年3月に協議を開始する改革会議の任務について述べた。シュレーダー首相は、各国首脳によって全会一致で採択された「ラーケン宣言」を「歴史的」と評価した。当初75歳のジスカールデスタン元大統領の他に、アマート前首相やオランダのヴィム・コック首相も議長候補に上ったが、最終的に首脳会議は、当初予定されていなかった副議長を任命することで合意に達した。
EUを一層市民に身近なものにする必要がある、とラーケン宣言は謳っている。「市民はあまりにも万事が彼らの頭越しに決定されていると考えており、民主的なコントロールの強化を望んでいる。」EUは「一層民主的で、透明で、効率的にならねばならない」。首脳会議はEUの歴史上初めて、各国議会の参加する改革会議に改革案の策定を委任することになった。これまでは機構改革は政府間の協議によっていた。
改革会議は、どのような任務をEUに委ね、どのような任務を各国の政府や地方の権限とするかを協議することになる。加えて、欧州委員会と欧州議会の強化の方法や、どのようにして各国議会を一層EUに結びつけるか、また、EU市民による欧州委員長の公選の是非なども検討する予定である。「このような簡素化と再編成が、長期的に欧州連合における憲法条文の採択へと至る可能性も最終的に問われることになる。」改革会議の結論はEU各国政府によって決定の運びとなる。
EU各国の首脳は、最も進展している加盟候補国については2002年に加盟協議を完了し、2004年に正式加盟となる可能性があることを強調した。首脳会議は欧州委員会の声明を引きながら、引き続き改革に努めれば2004年の加盟が考慮される国として初めて10ヶ国を国名で挙げた。エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、ハンガリー、スロヴァキア、チェコ、スロヴェニア、マルタおよびキプロスである。残りの2つの加盟候補国ブルガリアとルーマニアは来年、あらゆる分野について加盟準備交渉を開始することとなった。
9月11日のテロ実行犯追跡の戦争を国際社会の承認なくアフガニスタン以外に拡大しないことを求める、当初閉幕宣言に盛り込む予定であったアメリカに対する要請については、首脳会議は合意に至らなかった。この部分はイギリス、ドイツ、スペイン、イタリアおよびオランダの発議で削除された、と外交筋は伝えている。しかしEUは国連の決定に基づく国際的なアフガニスタン治安部隊の派遣について合意した。EU諸国は可能な範囲の貢献を検討する意向である。ベルギーのルイ・ミシェル外相は当初EU部隊と発言したが、EU部隊については決定を見なかった。
EUは、特別編成部隊のNATO軍施設の利用に関する論争は調停することができなかった。ギリシャのゲオルギウス・パパンドレウ外相は、EUの特別部隊は首脳会議で限定的な出動が可能と宣言され、これにより最初の出動に向けて態勢が整った。しかし、我が国はEU部隊の出動に関してトルコに共同決定権を与えた妥協案に対して依然態度を保留している、と述べた。トルコはNATO加盟国であるが、EU加盟国ではない。約60,000人の兵力を持つ特別部隊は2003年から危険地域の平和維持に出動する予定である。外交筋によれば、NATO軍の施設を利用することなしにはこの目標の達成は困難であるという。
同様に首脳会議では、新たなEU官庁の所在地をどこに決めるかという国の威信もからむ問題に関して、意見の一致を見るに至らなかった。ルクセンブルクのジャンクロード・ユンカー首相は、EU食糧庁をフィンランドのヘルシンキに、海運安全庁をポルトガルのリスボンに置くとした議長国ベルギーの提案をイタリアとフランスが拒絶した、と語った。イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相は食糧庁の所在地としてパルマを主張し、フランスは食糧庁をリールに置くか、海運安全庁をナントに置くかのいずれかを要求した。
ベルルスコーニは、時に声高にパルマを推し、イタリアの利益を主張したことを認めた。フランスのジャック・シラク大統領も自らの要求を強く主張した。EU議長を務めるベルギーのギー・フェルホフスタット首相は、首脳間で政治的取引が行われた場合にラーケン宣言のイメージに悪影響が及ぶことを避けるために議論を中止した、と述べた。
二日間わたった首脳会議の周辺では、反グローバル主義者と反戦論者によるデモが行われ、一部は暴動を伴った。目撃者によればドイツ人のデモ参加者もいたという。警察は、武器保持による逮捕を含め約70名を逮捕したと発表した。
原題:Konvent soll Entwurf fuer EU-Verfassung vorlegen