2002年12月15日(日)16:22
プラハ(ドイツ通信社-AFX)
浮かれた乾杯気分の後にはラストスパートに向けた精神集中。「ヨーロッパへの歴史的回帰」と大方から受けとめられたコペンハーゲン首脳会議のEU拡大決定を受けて、加盟候補10ヶ国では週末お祝いのシャンペンを開ける音が高らかに響いた。しかし数ヶ国ではこの月曜日にも来年の国民投票に向けた準備が開始される。その行方が注視される国民投票で国民の賛成が得られれば、2004年5月1日に予定される加盟に向けた条件が最終的に整うからである。
EU各国首脳は金曜日の晩、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロヴァキア、スロヴェニア、チェコ、ハンガリー、キプロスのEU招請で合意に達した。この決定を受けてハンガリーの政治家は「われわれは胸を張って再びヨーロッパに戻ったのだ」と歓呼の声を上げた。ポーランドは「戦後の歴史において比較できないほどの重要な出来事」と評した。チェコは「この決定の歴史的重要性は比率や価格などの数字よりも重要」と強調した。しかしどの国も浮かれ気分に浸っているばかりではない。そこには健全な現実認識もある。
たとえば地中海の島国マルタでは依然としてEU加盟反対の声が強い。世論調査によれば、国民のおよそ三分の一は加盟反対論者であるという。それゆえ2003年初めに行われる国民投票の行方は予断を許さない。チェコとポーランドでも国民投票の成功は自明というにはほど遠い。「われわれは今後半年の間、漠然とした不安や偏見に対する選挙戦を行う必要があるとチェコのヤロスラフ・パラス農業大臣は日曜日に述べた。ハンガリーではコペンハーゲン首脳会議の結果は、すべての陣営や国民から満足をもって受けとめられた。
ポーランドのアレクサンデル・クファシニェフスキ大統領も「コペンハーゲン会議はヤルタ会談やポツダム会談よりも重要であった」と強調した。ヤルタとポツダムではヨーロッパ大陸の分断が確定された。これまで12月13日はポーランドでは1981年の戒厳令布告の日であったが、今後は新たな意味づけが行われることになる。しかし、「農家を裏切った」として右派カトリック・民族主義的「ポーランド家族連合」(LPR)が政府に突きつけた退陣要求は、ポーランドでも国民投票の成功が予断を許さないことを示している。
大半のスロヴァキア国民はEU拡大のニュースを満足と無関心をもって受けとめた。最新の世論調査によれば、来年6月の国民投票では65%から70%が賛成と見られている。しかし大方の人々はこの週末明らかに政治よりもクリスマスの買い物に忙しかった。「クリスマス気分」はバルト諸国も同様である。リトアニアの新聞 "Lietuvos rytas" は、EUがエストニア、ラトヴィア、リトアニアに対して計画以上の資金を準備してくれたのは「クリスマスプレゼント」なのだと報じた。
この援助額の前にはバルト諸国に対するEU拡大の歴史的意義は影が薄れるほどである。ソ連から独立しておよそ10年、小さなバルト諸国は待ちわびた欧州への帰還の最後の道のりにある。スロヴェニアでもこの週末は浮かれた気分が漂っていた。スロヴェニアは1991年に崩壊したユーゴスラヴィアから先陣を切ってEU加盟を果たすことになったからである。
分断されたキプロスでは南部のギリシャ系キプロスが新たな欧州の時代に祝杯を上げた一方、首都ニコシアのトルコ管理地区では失望と野次の声が上がった。数千人の市民がトルコ系キプロスの指導者の公邸前に詰めかけ、「デンクタシュ、裏切り者!」と叫んだ。トルコの新聞 "Radikal" によれば初めの事態であるという。「われわれは完全なEU加盟と半分の解決をかち得た」とギリシャ系キプロスの通信社は土曜日コメントを発表した。1974年以来の分断が解消されない限り、EU法の適用範囲はギリシャ系キプロスに限られる。
原題:HINTERGRUND: Beitrittskandidaten kaempfen EU-Entscheid um Gunst der Bevoelkerung