2004年12月28日(火)10:00
ブリュッセル(AP)
欧州連合は激動の一年を終える。新規加盟10ヶ国への拡大、初の欧州憲法の合意、さらに来年10月3日のトルコとの加盟交渉開始の決定は、いずれも歴史的前進として評価されよう。
この3つの出来事はEUの将来をめぐる現在の議論の核心に関わる。すなわち、深化か拡大か、それとも両方一緒に行なうのか、という問題である。5月の東欧8ヶ国ならびにマルタとキプロスの新規加盟の決定は、歴史的観点からは異論の余地がない。これはEUの歴史上最大の拡大ラウンドであった。
これにより加盟国の数は15から25に増え、EUの総人口は約3億7000万から4億5500万へと膨れ上がった。歴史的必然である欧州大陸の統合は完了した。今のところEUは25ヶ国でもほとんど摩擦なく運営されている。しかしこれをどのように将来も保証したら良いのであろうか?
この問題に関し、EU各国首脳は粘り強い交渉の末、6月にEU憲法を採択した。この新たな憲法条約によりEU外相およびEU大統領職が創設される。閣僚理事会の多数決決定では加盟国の人口に一層の配慮が加えられる。多数決決定の認められる政治分野が拡がり、欧州議会の影響力が強化される。
EU各国首脳は10月29日、ローマで欧州憲法の調印式を行なった。調印式は1957年にイタリア、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクがヨーロッパ経済共同体(EEC)の創設を定めたローマ条約を調印した、その同じホールの歴史的場所で行なわれた。
しかし新たな憲法条約はまだ発効にはほど遠い。なぜなら加盟全25ヶ国の批准を経ねばならないからである。イギリスやフランスなど、少なくとも9ヶ国は国民投票による批准を計画している。英仏両国では投票の行方は予断を許さない。EUにはなお人々を納得させる説明努力が求められるだろう。
欧州憲法が発効に至れば、拡大EUの運営機能は保証されるだろう。2007年に予定されているブルガリア、ルーマニア、およびおそらくはクロアチアの加盟も阻害要因とはならない。しかしEUはこれと並行して、他のバルカン諸国、すなわちボスニア、セルビア・モンテネグロ、マケドニア、アルバニアとどのような関係を結ぶのかを検討せねばならないであろう。
これらの国々の加盟は、地図を見ただけでも中期的には避けられないことが分かるであろう。ウクライナも次の間に控えている。12月17日のEU首脳会議の交渉開始決定を受けたトルコももちろんである。だがトルコの加盟についてはいまだ内定はない。
というのは、交渉はトルコのEU加盟を目標に進められるものの、加盟の保証は与えられていないのである。そしてたとえ10年か15年後に加盟交渉が完了しても、トルコ加盟の承認はおそらくはEU加盟全28ヶ国の批准を必要とすることになる。フランスおよびオーストリアも今日、トルコ加盟問題を国民投票で問うことを発表した。
EUはこの問題でもEU市民を納得させるべく相当の説明努力が求められよう。一般的にEU市民は、EUが彼らの頭越しに運営されていると感じているのである。さもなければ6月に行なわれた欧州議会選挙の低投票率は説明がつかない。しかし欧州議会は今年、EU諸機構の歯車の中で初めてその実力の程を示すことができた。
ポルトガルのジョゼ・マニュエル・バローゾ新委員長率いる新欧州委員会の任命は、EU各国首脳にとって鞭の列をくぐる刑罰のようなものであった。一切の警告をものともせず、欧州議会は10月末、バローゾ委員長の新欧州委員会人事案を拒否したのである。否決の最大の理由はイタリア出身の強硬な保守派のロッコ・ブティリョーネ欧州委員候補であった。これは大方の消息筋の見るところ、民主主義の勝利であった。
バローゾ新委員長は再度人選を行い、欧州議会の承認を取り付けた。EUは憲法と拡大の問題でもこの事例を教訓として、2005年は一層民主的で透明性の高い連合という目標に向けた心構えが求められよう。
原題:Vertiefung oder Erweiterung?