2015年12月17日(木)

EU首脳会議:尻込みする国と脅す国

フランクフルター・ルントシャウ紙(ペーター・リースベック記者)

ブリュッセルでは反目しあっている国々の首脳会議が開かれる。EUは分裂の様相を呈しており、多くの参加国はEUがすでに決定した措置の実行に満足していない。フランクフルター・ルントシャウ紙はEU加盟国の異なる対応をまとめる。

EU首脳会議の最終文書の草案は明らかだ。難民問題の解決のためにEUがこれまで決定した措置の実行は「不十分」である。「ホットスポット」と呼ばれる登録センターは「急ぎ着手する」必要がある。確固たる比率に基づく難民の受け入れ分担は「実行の速度を上げる」必要がある。EUの対外国境の管理を「大幅に拡充」し、欧州委員会によるEU国境沿岸警備隊の創設提案を「ただちに検討」せねばならないという内容である。EUは難民政策で前進していないのだ。

それゆえオーストリアのヴェルナー・ファイマン首相は「連帯は一方通行ではない。EU予算の実質受益国は、公正な難民受け入れ分担を逃れてはならない」と、難民政策にブレーキをかけているポーランド、スロヴァキア、チェコ、ルーマニア、ハンガリーなどの東欧諸国を念頭に警告を発した。ハンガリーのオルバン首相はこれを「恫喝」と評した。EUは分裂している。EUの断層線を辿ってみよう。

オーストリア:ヴェルナー・ファイマン首相は(アンゲラ・メルケル独首相と協力して)独自の首脳会議を招請した。ブリュッセルで11のEU加盟国がトルコのアフメト・ダーヴトオール首相と会談を行ったのだ。議題はすでに合意されたトルコとの行動計画である。約30億ユーロのEU支援プログラムのうち約20億ユーロが未決定である。別の数字も重要である。11月末のEUとトルコの首脳会談以降、議長国ルクセンブルクによれば1日約4,000人の難民がトルコ経由でEUに入っており、これはそれ以前と比較して2千人近く少ないという。EUは国境管理をさらに厳しく行うよう望んでいる。その代償としてEU加盟国はトルコのシリア難民を引き受けることを考えている。その数は4万人から5万人。東欧の消極的な国々がこれに加わることがあれば、受け入れ分担数に含めることも考えられるという。

スウェーデン:「我が国の収容能力にも限界がある」とステファン・ロヴェーン首相は述べた。木曜日(17日)スウェーデン議会は法案を可決し、1月4日以降スウェーデンの国境での国境検査再開を決めた。難民政策に関するスウェーデンの課題は急を要する。到着する難民の大半が同伴者のいない未成年なのである。これは具体的には1ヶ月に最大で200の教室が新たに必要になることを意味する。そのためスウェーデンはEUに、スウェーデンの難民の一部を他のEU加盟国に割り当てるよう求めている。

ドイツ:今週初めのキリスト教民主同盟(CDU)の党大会ではメルケル首相が党首として主役を務めた。木曜日のブリュッセルではいつもの問題が待っている。これに新しい問題が一つ加わる。スウェーデンが国境検査を再開すれば、デンマークもドイツとの国境検査を導入する意向である。欧州の中央に位置するドイツは周囲から狭められる恐れがある。そのためもあってメルケル首相は急いでいる。「私たちは非合法の移民をストップし、合法的なルートを実現する必要がある」と述べる。首相が当てにしているのはトルコであり合法的な難民分担である。また欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長と国境沿岸警備隊の創設にも期待をかける。これは「できるだけ早く」実現すべきであるとメルケル首相は言う。うまく行けば来年7月、しかしむしろ2016年末が現実的である。

ポーランド:エヴァ・シドロ新首相は少し遅れて到着した。ポーランド議会では憲法裁判所の新たな判事をめぐる問題で議論が行われた。ポーランドには新たな風が吹いており、これはブリュッセルのEUも感じている。前政権とは対照的に、ポーランドの新政権は明確な移民割当を拒否している。また国境沿岸警備隊が関係国の国境管理に介入する権利についても危惧している。EUにとっての唯一の好材料は、国境沿岸警備庁がワルシャワに置かれることであり、新たな職員雇用でポーランドは間接的に恩恵を受ける可能性があるためである。

ハンガリー:ヴィクトール・オルバン首相は難民政策において長らく悪童役をつとめてきた。首相は今秋の首脳会議で、どちらが重視されるのかという問題を提起した。すなわち難民はEUに入国した際の国に留まらねばならないとするダブリン指令か、それともシェンゲン条約、つまりその対外国境なのかと。現在ダブリン指令の改正が始まり、シェンゲン圏救済のために緊急時には新たなEU国境沿岸警備隊がEUの対外国境を警戒することが検討される。オルバン首相の「提言は報われる」とイギリスのタイムズ紙は木曜日ハンガリーに対して敬意を表した。

英国:デイヴィッド・キャメロン首相のテーマは難民政策ではなく、自らのEU改革案である。首相は4つの要求を掲げ、要求が容れられなければ英国のEU脱退もあると警告した。ユーロ圏の決定に対する異議申し立ての権利、常に統合の進展を求める規定の廃止、国家主権の強化、そして中でも他の欧州連合加盟国からの移住者に対する最長4年間の社会保障受給資格停止である。これに対しては東欧とりわけポーランドから反対の声が上がった。メルケル首相はこの問題で仲介者の役を務める意向であるが、労働者の自由な移動は不可侵であると釘を刺した。夕食会の席でキャメロン首相の改革リストについて協議が行われる予定である。キャメロン首相は2016年2月までの解決を望んでいる。

原題:EU-Gipfel
Vom Zaudern und Erpressen




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