2002年2月28日(木)13:05

シュレーダー首相はチェコ訪問を取りやめる

ベルリン(ロイター)

ドイツのゲルハルト・シュレーダー首相(社会民主党)は、ドイツ人とハンガリー人の放逐を定めたベネシュ布告をめぐり、中欧で新たな論争が起きているという背景を踏まえ、3月下旬に予定されていたチェコ訪問を取りやめた。

ドイツ政府のシャリマ・ラインハルト副広報官は、木曜日ベルリンにおいて、「首相の訪問を延期することで双方は合意した」と発表した。延期の理由は挙げなかった。政府筋の伝えるところによれば、この決定の背景にはチェコの選挙戦もあったという。チェコでは6月に議会選挙が行われる。

チェコのヴァーツラフ・クラウス国会議長は、先日ミロシュ・ゼマン首相に対して、欧州連合(EU)との加盟交渉において、ベネシュ布告の修正を阻止する条項を盛り込むよう求めた。チェコは2004年にEU加盟を果たす意向である。

ベネシュ布告に基づき、第二次大戦後ドイツ人とハンガリー人がチェコスロヴァキアから追放された。これに対し、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は、チェコがEU加盟前に同布告を撤回するよう求めた。オルバンのこの発言後、いわゆるヴィシェグラード協力のポーランド、チェコ、スロヴァキアおよびハンガリーの首脳会談が流会となった。シュレーダー首相には、自らのチェコ訪問がこの論争で一部の側から利用されるのを避ける意図があったと見られている。

クラウス議長は民主市民党の党首であり、同党は社会民主党のゼマン首相率いる少数派政権に寛容な態度をとっている。クラウス議長はかつて首相として、ドイツのヘルムート・コール(キリスト教民主同盟)前首相とともにドイツ・チェコ共同声明に調印し、数十年来くすぶっていたベネシュ布告をめぐる論争の緊張緩和をはかった。シュレーダー首相は当初、調印5周年を迎えた同声明の再確認のためにプラハを訪問する意向であった。

この声明において、チェコ側は無辜のドイツ人が蒙った苦悩を遺憾とし、一方ドイツ側はナチ時代のチェコスロヴァキアの占領と解体の責任を認めた。

ラインハルト副広報官は、シュレーダー首相の新たな訪問の期日はまだ決まっていないと述べた。政府筋によれば、シュレーダー首相はすでに前日の閣議で、訪問延期を通告したという。『南ドイツ新聞』もこれを木曜版で報じている。

ドイツとチェコの関係は最近ではゼマン首相の発言で悪化した。同首相はインタビューでズデーテンドイツ人を「(ナチの)チェコ国民に対する集団虐殺を支持した」「ヒトラーの第五列」であり「裏切り者」であると称した。首相はまたオーストリアの『プロフィール』紙に、ズデーテンドイツ人の放逐は、国家反逆罪に対して適用される死刑よりも「おだやかなもの」であったと述べた。これに対し、シュレーダー首相は最初、ヨシュカ・フィッシャー外相(緑の党)のプラハ訪問の成功を自身の訪問の条件とした。

ドイツ政府筋によれば、フィッシャー外相の訪問は、ゼマン首相のインタビュー発言後に生じた波紋を静めるという当初の目的を果たした。しかしベネシュ布告をめぐる新たな論争が首相の訪問を再び困難にしたという。

原題:Schroeder sagt Besuch in Tschechien ab