2016年2月3日(水)

EUはキャメロン首相への譲歩で英国のEU脱退を阻止する構え

AFP

EUは一連の譲歩を行って英国のEU脱退を阻止する意向である。ドナルド・トゥスクEU常任議長は火曜日、デイヴィッド・キャメロン英首相の改革要求に対する譲歩案を示した。それによれば、他のEU加盟国からの労働者に対する社会保障給付を最長4年間制限することを認める内容となっている。これに対し欧州議会からは批判の声が上がった。この包括案は他の27ヶ国すべての承認も必要となる。

トゥスク常任議長によれば、英国政府に対して非ユーロ加盟国の権利の保護や加盟国議会の役割ならびに競争力の強化も認められたという。キャメロン首相は遅くとも2017年、しかしおそらくは今年中にEU残留の是非を問う国民投票を実施する意向である。首相は英国のEU残留に対する支持を得るためにはEU改革が前提条件であるとしていた。

EU側で交渉をリードしたトゥスク常任議長は「歩み寄りのための良い叩き台」ができた。英国に対する提案はキャメロン首相の懸念を受けとめるべく「きわめて踏み込んだ」ものとなっている。だが欧州統合のプロジェクトが拠って立つ原則は損なわれていない、と語った。

ブリュッセルの提案は英国が改革を要求する四分野すべてにおいて「真の前進」を意味する。「しかしさらなる改革が必要だ」とキャメロン首相はツイッターに記した。英国のデイヴィッド・リディントンEU担当相は合意が「視野に入った」と述べた。

しかし英国内のEU懐疑派は改革案に納得しなかった。キャメロン首相の得た成果は「乏しい」と右派大衆迎合主義の英国独立党のナイジェル・ファラージュ党首はツイッターで語った。キャメロン首相の属する保守党からも批判の声が上がった。ロンドンのボリス・ジョンソン市長は、EUの計画に「レッドカード」を提示して拒否権で阻止するという加盟国議会の権利がはたして効力を持つかと疑問を提起した。

実際、トゥスク常任議長が発表した提案は込み入っていて、その本当の効力は予測し難い。たとえば他のEU加盟国からの移民に対する社会保障の支給除外には一連の条件が付けられている。加えて、欧州委員会ばかりかEU加盟国の特定多数決による承認も必要となる。

仕事を求めて英国に渡る人の多い東欧の数ヶ国は、この計画を差別と受け止めている。またフランスの懸念にもかかわらず、トゥスク常任議長の計画はユーロ非加盟9ヶ国がユーロ加盟国に対して決定の差し止めを求められる「メカニズム」も含んでいる。だが緊急の決定は阻止されない。

トゥスク常任議長は今後2週間で妥協案に関して「さらに精力的な交渉」を行うと予告した。「すべて合意されるまで何一つ合意事項はない」。目標は2月18日と19日のブリュッセルEU首脳会議で決定を行うことにある、とトゥスク常任議長は述べた。首尾良くその通りに行けば、キャメロン首相が6月にも国民投票を実施する可能性もある。決定がずれ込めば、9月かそれ以降になると見られる。

欧州議会の反応は、EUと英国の間で妥協が図られたことに対する安堵とあからさまな批判の間を揺れ動いた。保守系の欧州人民党(EVP)議員団の団長は、合意に向けた「良い叩き台」だと評価した。重要なのは、この提案もユーロがEUの通貨であり、その原則は疑問視されないと強調している点だ、と述べた。

社会民主党(SPD)所属のヨー・ライネン議員は、非常ブレーキと呼ばれるEU加盟国からの移民に対する社会保障給付停止を批判した。これは他の国のEU市民に対する「差別に向けた足がかり」であり、「長期的にEU内の人の移動の自由を掘り崩す恐れがある、とライネン議員は述べた。自由民主党(FDP)のアレクサンダー・ラムズドルフ代表も「明らかな差別」と批判した。

原題:Bruessel will Brexit mit Zugestaendnissen an Cameron verhindern




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