2002年1月23日(水)17:57

チェコ政府のズデーテンドイツ人非難に憤激の声

フィッシャー外相はプラハを訪問へ−「ドイツ政府は連帯責任の考えを認めない」

ベルリン(AP)

ズデーテンドイツ人に集団責任があるとしたチェコのミロシュ・ゼマン首相の発言に対する故郷放逐者の憤激は、ドイツの連邦議会で感情的な色彩を帯びた論議を巻き起こした。ヨシュカ・フィッシャー外相は水曜日連邦議会で、ドイツ政府は連帯責任も集団的処罰権も認めないと表明した。緑の党所属のフィッシャー外相はこの論争の沈静化をはかるべく、2月20日にプラハを訪問する。

キリスト教民主同盟・社会同盟はゲルハルト・シュレーダー首相に対して、ゼマン首相の発言を退け、謝罪を求めるよう要求した。チェコのゼマン首相は、ボヘミヤのテメリン原発をめぐる同国とオーストリアの非難合戦の中で、ズデーテンドイツ人を「ヒトラーの第五列」*) であり「国賊」であると呼んだ。

フィッシャー外相は、ドイツ側とチェコ側の双方がドイツ人の連帯責任を否定した1997年の両国の共同声明を指摘した。このような事情であるので、ズデーテンドイツ人の放逐のような重大な人権侵害も正当と呼ぶことはできない、と同外相は述べた。外相はすべての当事者に対して、この件を拡大に向かうヨーロッパの礎とし、拡大の障害を作らぬよう呼びかけた。

フィッシャー外相は、ケルンテン州知事イェルク・ハイダーによるチェコのテメリン原発反対の国民請願をめぐるチェコ政府とオーストリア政府の争いについては、ほのめかす程度に留めた。外相は、隣国に対抗する民族主義的な気運を醸成しようとする「環境保護を装った運動」に警告を発した。すでにチェコのヤン・カヴァン外相はドイツとチェコの関係が損なわれてはならないと明確に表明している、とフィッシャー外相は述べた。

連邦議会の論議において、故郷放逐問題担当のハルトムート・コシュク議員(キリスト教社会同盟(CSU))は、ゼマン首相の発言を「名誉を傷つけるものであり、いかなる面でも歴史的真実に基づかない」と批判した。キリスト教民主同盟(CDU)のエーリカ・ラインハルト議員は、ゼマン首相はその発言でヨーロッパの融和政策に楔を打ち込んだのだ。この問題が解決されない限り、チェコのEU加盟もありえない、と述べた。

「スキャンダラスな人種差別的発言」

放逐問題担当のエーリカ・シュタインバッハ(CDU)は、スキャンダラスな人種差別的発言であり、ドイツ・チェコ共同声明から5年を経た今、このような発言がなされるとは予想もしなかった。故郷放逐をゆるやかな刑罰であるとしてその重大さを偽る者は、欧州の人権や価値基盤について「何も理解していない」と述べた。CSUのクリスチャン・シュミット議員はゼマン首相を「個人的にEU加盟条件を欠く」と評した。

外務省のクリストフ・ツェーペル次官(社会民主党(SPD))は、いつであれ加害者と犠牲者だけがいたためしはない。同時に何ぴとも自らの歴史の責任を免れることはできない。しかし連帯責任などは存在しないのだ。この認識は数十年たってもチェコで議論となろう。ドイツも、たとえば強制労働者の補償という主張が通るまで、数十年を要したのだ、と語った。自由民主党(FDP)のウルリヒ・イルマー議員は、この論争を欧州統合のために「もっと掘り下げる」よう勧めた。放逐の根拠たるチェコのベネシュ布告の撤回を要求する者は、ヒトラーによるチェコの解体を定めたミュンヒェン協約の撤回も要求せねばならない。どちらも法的理由からきわめて問題がある、と同議員は主張した。

*) 訳注:「第五列」とは敵地内で活動する秘密工作部隊の意味。スペイン内戦に由来する言葉。

原題:Helle Empoerung ueber Prager Angriffe auf Sudetendeutsche
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