2004年1月18日(日)16:45
フランクフルト・アム・マイン(AP)
欧州委員会のギュンター・フェアホイゲン拡大担当委員は、EU拡大によって安価な労働力がドイツに大量流入する恐れはないとのの見解を示した。同委員は『ヴェルト日曜版』紙Welt am Sonntag に対して、賃金や社会保障、環境基準のダンピングはありえないと述べた。たとえばポーランドの企業がドイツに進出した場合、現行の派遣基準が今後も適用されるため、ドイツの基準で働くことになる、と同委員は説明し、「いわゆる安価な労働力が流入することはない」と語った。これに対し、ドイツ労働総同盟(DGB)のミヒャエル・ゾマー委員長は賃金や社会水準の問題で懸念を表明した。
ゾマー委員長は『フランクフルター・ルントシャウ』紙Frankfurter Rundschau(日曜版)に、「労働時間の延長や賃金の引き下げの競争になれば、私たちの国民経済は大きな打撃を受けるだろう」と述べた。あわせて同委員長は労働組合に対してEUへの一層の取り組みを呼びかけた。「労働組合は、私たちドイツも含めて、これまでずっと一国の政治にしか関わってこなかった。これを私たちは変えよう。」
フェアホイゲン委員は、私の見解ではドイツ手工業の状況はむしろ改善すると思われる。すでに現在でも多くの中規模企業が新規EU加盟国に提携相手を見つけている、と述べた。「ドイツは新規加盟国の急速な成長と急速な需要の増加から他のどのEU加盟国よりも利益を得るだろう。」
また欧州委員会は3ヶ月半後に控えたEU拡大の後も工業化の遅れた東独地域に補助を行うつもりである、とフェアホイゲン委員は述べた上で、「この地域が東方拡大によって統計上は幾分相対的に豊かになるからといって、補助金を打ち切るのは理に叶わない」と語った。
しかし東ドイツ各州の州首相は数十億ユーロのEU地域補助金がカットされるのではないかと危惧している。テューリンゲン州のディーター・アルトハウス州首相(キリスト教民主同盟)は『ロイトリンガー・ゲネラール・アンツァイガー』紙 Reutlinger General-Anzeiger に対して、テューリンゲンや他の旧東ドイツの諸州は統計上の理由だけで補助対象地域から外される恐れがある。しかしテューリンゲンは補助金を諦めることはできない、と語った。
ブランデンブルク州のマティーアス・プラツェク州首相(社会民主党)も、東独諸州の経済指標ではなく他国の新規EU加盟のみに基づく、従来の最高補助地域指定の解除を「受け容れ難い」と評した。同じくザクセン・アンハルト州のヴォルフガング・ベーマー州首相(キリスト教民主同盟)も「私たちは断念せざるを得ない状況にも、断念できる状況にもない」と同紙に語った。
この間、欧州委員会のミヒャエレ・シュライヤー予算担当委員は、拡大後もEUの予算を削減しないよう強く求めた。ドイツのゲルハルト・シュレーダー首相(社会民主党)とフランスのジャック・シラク大統領は2年前に数百億ユーロの農業補助金制度を2013年まで維持することで合意しているが、2007年以降はEU拠出金を増額しない意向である。シュライヤー委員は、だが予算枠を拡大してこそEU各国首脳が決定した追加的課題が財政的に負担できるのである、とニュース雑誌『フォーカス』Focusに語った。
原題:Verheugen erwartet keinen Ansturm von Billigloehnern