2013年7月1日(月)フランクフルター・ルントシャウ紙Frankfurter Rundschau 社説

クロアチアの新規加盟:誠実な歓迎を

クロアチアは欧州連合の最新の加盟国となった。全員が喜んでいるわけではないが、懐疑派が忘れていることがひとつある。それは、締め出されたままの国は、私たちにとって、もっと高くつくということだ。

ノルベルト・マッペス=ニーディーク

EUは史上最大の危機のさなかにあって本当に新たな加盟国を必要としているのだろうか。しかも経済危機の続く、かつてのユーゴ内戦の当事国を。新規加盟国クロアチアの輸出産業の弱さや失業率の高さ、巨額の債務を理由に、欧州連合の今後の負担増を予測する者は、残念ながら正しいと言わざるを得ない。正しくないのは、こうした事情からクロアチアや他の南東欧諸国をまだ当面欧州連合に迎え入れるべきでないと結論づける者である。

EU拡大反対論者が常に忘れていることは、非加盟の場合のコストを計算することである。もしクロアチアや、あわせて隣国のセルビア、ボスニア、モンテネグロにEUへの扉が閉ざされていたら、どうなるだろうか。欧州連合は新規加盟国を受け入れる前に、まずは「じっくりと」共同体の深化に努めるべきであるという忠告をここ数日また耳にする。しかし加盟を望む国々をEUの戦略文書から削除しても、彼らが地図から消えたことにはならないのである。彼らは今ある場所にそのまま存在し、声を上げるだろう。彼らの抱える問題は国内よりも国外の方でむしろ深刻になるだろう。彼らと私たちの間には海もなければリオ・グランデ川もない。

バルカンがどれほどの紛争をもたらすか、戦火の絶えない1990年代に世界は学んだはずである。スロヴェニアとクロアチアは当時、「ヨーロッパの要塞」に加わるという希望を認められた。しかし他の独立共和国には今なお展望が与えられていないのである。これがユーゴスラヴィア解体に拍車をかけた。もしEUが当時ユーゴスラヴィア全体を一切の問題を含めて受け入れていたならば、おそらく破局には至らなかったであろう。10週間に及ぶコソボ空爆は10年間のEU拡大と同じくらい高くついてしまったのだ。

加盟に向けた長い道のり−クロアチアは丸7年間を加盟交渉に費やした−は近代化、民主化、西欧化への道のりでもあった。この道が唯一の道であったというわけではない。ユーゴ内戦後もフラニョ・トゥジマン初代大統領の死までクロアチアは独自の独裁的な道を歩んだ。コソボ戦争が終わり、ようやくEUへの扉が開いたとき、有権者は突然方向転換し、劣勢の政党はこの急展開を必死に追いかけた。それから二三年後、セルビアでも独裁的で民族主義的な野党がEU加盟路線へと舵を切った。さもなければ有権者に見放されてしまったからである。

親EUのクロアチア国民はヨーロッパという磁力を必要とし、またこれを利用した。磁力のないところでは混乱が広がる。私たちが西側で「じっくりと」深化に専念する時間を、バルカン半島は与えてくれないだろう。セルビアやボスニアはノルウェーやスイスとは比較にならないのだ。東欧がなお経ねばならない「成熟」という政治家の比喩も実情に合わない。そこでは何ひとつ「成熟」せず、何ひとつ時だけでは解決しない。むしろEUという目標について、加盟を望むすべての国で公然とあるいはひそかに論争が行われているのだ。寡頭制主義者や権力者、急進主義者は権力を譲り渡し、監督権を外国に与えることなど、まったく念頭にない。国民も同様である。

結局のところ加盟への道のり自体が目標である、とEU拡大懐疑派は一歩後退した結論を導くだろう。すなわち加盟に向けた準備を行っている間は候補国の改革が進む。しかしひとたびEUに加盟してしまえば、改革も終わり。ちょうどルーマニアとブルガリアの例で見てきたように、と。加盟前の急テンポの改革の後に、クロアチアに対しても休憩が認められるという点に関しては正しい。しかし中期的には絶えず役割が交替する他の加盟国と似た状況になるだろうし、またそうならねばならない。これまですべてのEU諸国では、数多くのEUの委員会に代表を送ることで、接近を通した変化がもたらされているのである。

しかしとりわけ馬の鼻先に人参をぶら下げるようなまねは許されない。馬がそれに気がつかないなどと考えてはならない。加盟の約束に効力を与えようとするなら、いつかはそれを果たさねばならないときが来るのである。約束を果たす用意がなければどんな事態になるかは、トルコの事例でわかる。EUは長年の引き延ばし戦術で、トルコの親EU派に避けがたく癒しがたい敗北をもたらしたのである。マケドニアとアルバニアはもう十分すぎるほど待たされている。EUは両国に対して儀礼的スピーチ以上の約束を行っていない。両国の腐敗した指導層はEUの周縁で居心地良く居座っている。

帳簿の借方には計算可能なコストが記されている。EUはクロアチアのために5億ユーロを計上した。これは銀行救済の時代においては、EU加盟国財務相が朝食と食後の一服の間に供出を決める程度の額である。クロアチアはユーロ加盟国にならない限り、どんな救済策の対象にもならない。通貨の維持が問題になったハンガリーとルーマニアには、国際通貨基金が主たる支援を行った。こうした事情は讃歌を歌ってクロアチアを歓迎する理由にはならない。しかし誠実な歓迎を行う理由にはなる。

原題:Ehrlicher Willkommensgruss
von Norbert Mappes-Niediek




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