2002年6月5日(水)19:02
プラハ(ドイツ通信社)
大きな論議を呼んだドイツのゲルハルト・シュレーダー首相(社会民主党)のプラハ訪問中止から3ヶ月、ドイツのヨハネス・ラウ大統領とチェコのヴァーツラフ・ハヴェル大統領は両国関係に良い刺激を与えるべく尽力した。
両大統領は水曜日、ラウ大統領のプラハ実務訪問に際して、両国関係はズデーテンドイツ人放逐をめぐる論争にもかかわらず「きわめて良好」であると強調した。両大統領は融和プロセスを激しい言葉で妨げぬよう戒めた。
ベネシュ布告をめぐる論争のため、シュレーダー首相は3月のプラハ訪問を取りやめた。エドヴァルト・ベネシュ大統領(1884‐1948)の戦後の布告をめぐる論争に関して、ラウ大統領は水曜日、「あまりにも法的問題ばかりが取り上げられ、個々人の苦しみが議論されていない」と批判した。私は、時に双方の口調がこれまで達成された合意から後退していることを憂慮している。世界大戦の不正の結果としての放逐はそれ自体大きな苦しみの原因になった、とラウ大統領は強調した。
ラウ大統領は、戦後放逐が行われたことは残念ながら歴史的事実である、とドイツ・チェコ親善交流学校の起工式を終えて語った。さらに大統領は、しかしドイツとチェコの国民は互いの歴史を見直し、そこから「民族的なものを越える」認識を導き出す時に来ている。私が不快感を覚えるのは、放逐をめぐる議論において、布告に関する1997年のドイツ・チェコ和解宣言がほとんど引き合いに出されていない点である、と批判した。
ハヴェル大統領はチェコの政治家の放逐弁護を踏まえて、「自己の歴史的行動を不可侵の聖域と」せぬよう呼びかけた。共産主義政権が続いたため、チェコは歴史の見直しが数十年遅れているが、自らの過去を「自らの眼から隠し遠ざける」べきではない、と主張した。2004年に計画されているEU加盟を控えた今こそ、チェコにとって「真実と自由を恐れる」理由があってはならないのである、と大統領は語った。
「東欧ブロック」の禁制芸術を集めた国立美術館の展覧会の開幕式において、ラウ大統領は収容所からの報告や地下で出版された著作を「ヨーロッパ文化の不可欠の一部」と称した。この『サミツダト』展Samizdat(ロシア語で「自費出版」の意)はブレーメン大学(東欧研究所)のコレクションに基づく。「このような芸術を生み出した国を欧州に加盟する資格に欠けるとするならば、侮蔑もはなはだしい」*)と東欧研究所のヴォルフガング・アイヒヴェーデ所長は語った。
両国関係を最近の発言だけで判断しようとすれば、関係改善に尽力している多くの人々に対し、不当な扱いをすることになる、とハヴェル大統領は強調した。良好な協力関係の一例として、両大統領は和解宣言に基づいて設置された未来基金を挙げた。未来基金は、ズデーテンドイツ人も参加する数多くのプロジェクトを支援している、とラウ大統領とハヴェル大統領は強調した。また和解宣言には、双方が両国関係を未来に向けて構築すると記されている、とラウ大統領は指摘した。「このコンセンサスを私たちは決して忘れてはならない。」
原題:Rau und Havel um Beruhigng der bilateralen Beziehungen bemueht
*)訳注:チェコの「欧州に加盟する資格」Europatauglichkeit を問題にしたのは、キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU/CSU)の首相候補で、バイエルン州首相を務めるエトムント・シュトイバー(CSU)。シュトイバー州首相は5月19日、ニュルンベルクにおける第53回ズデーテンドイツ人大会の席で、「2002年の欧州において、57年以上前に遡る放逐と公民権剥奪を弁護する者は、あらゆるヨーロッパ人から欧州に加盟する資格を問われることになる」と発言した。(5月19日のAP電「シュトイバー首相候補はベネシュ布告をチェコのEU加盟の条件とするよう主張」を参照。)