2002年6月12日(水)17:25
ストラスブール(AP)
欧州委員会はこれまでにない厳しい調子で、計画中のEU東方拡大の遅延に対して警告を発した。「欧州の将来の平和と安定にとって最大の危険は、我々が最後の最後になって勇気を失い、欧州大陸統合の歴史的好機をみすみす逃してしまうことだ」とEU拡大担当のギュンター・フェアホイゲン欧州委員は水曜日、ストラスブールの欧州議会で語った。
フェアホイゲン同様、現EU議長国スペインも、10ヶ国との加盟交渉が今年の12月までに完了するとの期待を表明している。フェアホイゲン委員は「絶対に好機を逃してはならない」。しかしEUは逆風も感じており、拡大をめぐる空気は一層厳しくなった。かさぶたがいかに薄いものであるかを、チェコのベネシュ布告をめぐる議論の再燃が示している。この問題をめぐる議論は敬意を持って和解の精神で行われねばならない。「議論が新たな傷を切り開くことがあってはならないのだ」と述べた。
欧州議会の外交委員会のエルマー・ブローク委員長は、ベネシュ布告はチェコとEU間の加盟交渉の対象ではない。「これは歴史なのだ」。調査の対象となっているのは、今日のチェコの法律に人種差別的な要素が含まれているか否かという点である。もしそのような場合には、差別的な要素は削除されねばならない。法律鑑定は9月に判断が下される予定である、と語った。保守系のユルゲン・シュレーダー欧州議員は、第二次大戦後のチェコの財産関係を不可侵と認めるよう、ズデーテンドイツ人に対して繰り返し訴えかけた。
今年末までにEUは加盟候補国との間で、農業や構造補助金という意見の対立する項目について交渉を行わねばならない。現EU加盟国の間でとりわけ激しい議論が行われているのが農家に対する直接補助金の将来のありかたである。EU各国外相は月曜日に加盟15ヶ国の共同見解を取りまとめようとして失敗したばかりである。
とりわけEUの実質負担国であるドイツ、イギリス、スウェーデンおよびオランダが、数十億ユーロにのぼる直接補助金システムをそのまま25ヶ国の拡大EUに敷衍することに難色を示している。加盟候補国に多額の直接補助金が支給された場合、支出が増え過ぎることを懸念しているのである。
EUは遅くとも10月のブリュッセルにおけるEU首脳会議までに直接補助金問題の合意を目指している。その次の12月のコペンハーゲン首脳会議までには候補諸国との加盟交渉を終える必要がある。フェアホイゲン委員の見解では、拡大のコストについても率直な話し合いが持たれねばならない。「だが拡大が実現しない場合のコストについても議論していただきたい」と同委員は述べた。
議長国スペインを代弁してラモン・デ・ミゲル政務次官は、12月のEU首脳会議でトルコとの加盟交渉の開始期日を発表するよう求めた同国政府の要求を退けた。「我々皆が束縛されているのは希望的観測ではなく原則なのである」。あわせてデ・ミゲル政務次官はキプロスの加盟計画を踏まえ、二つの民族グループを抱えるキプロスがEUに加盟したあかつきには「ただ一つの声で話すことができるだろう」と明確に述べた。
原題:Verheugen warnt vor Verschiebung von EU-Erweiterung
Erste Zusammenfassung