2005年6月4日(土)20:15

トルコのEU加盟をめぐり新たな論争

ベルリン(AP)

EUの憲法問題の危機はトルコ加盟をめぐる論争に新たに火をつけた。キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU/CSU)は土曜日、正式加盟の代わりに特権的パートナーシップを目指すよう路線転換を迫った。これに対し、トルコのレチェプ・タイップ・エルドアン首相はトルコEU正式加盟の目標を下ろさぬよう警告を行った。「私たちはこれ以外の目標を受け入れる用意はない。」

キリスト教民主同盟・社会同盟は、フランスとオランダ国民のEU憲法否決を受けたシュレーダー首相の危機管理についても批判した。自由民主党(FDP)はドイツでも国民投票を実施するよう主張した。この日の晩、シュレーダー首相とジャック・シラク大統領はベルリンで今後の手順を協議した。

EUは10月3日にトルコとの加盟交渉を開始する意向である。キリスト教民主同盟・社会同盟は以前から正式加盟の代わりに特権的パートナーシップを提唱している。エルドアン首相は、キリスト教民主同盟・社会同盟がこのような姿勢でドイツとトルコの関係を危険にさらしていると非難した。特権的パートナーシップの要求は「EUがトルコに対して約束した義務に反する」ものである、とエルドアン首相は『ビルト日曜版』紙Bild am Sonntagに語った。

キリスト教民主同盟のアンゲラ・メルケル党首は、トルコとの加盟交渉開始の期日を疑問視することはしなかったものの、キリスト教社会同盟のエトムント・シュトイバー党首と同様、新たに目標を設定しなおすよう提唱した。「私たちは特権的パートナーシップを望む」とメルケル党首は『フランクフルター・アルゲマイネ・ゾンタークスツァイトゥング』紙Frankfurter Allgemeine Sonntagszeitungに語った。

シュトイバー党首はEUのトルコ政策がEU憲法の危機を招いた一因であると述べた。「正式加盟国になれますよとのシュレーダー首相とシラク大統領のトルコに対するシグナルが、EU憲法条約の否決を招いたのだ」と『ミュンヒナー・メルクーア』紙Muenchner Merkurに語った。さらに同党首は9月に予定されている総選挙を踏まえ、「私は、シュレーダー首相がトルコの正式加盟のみを目標とした加盟交渉の開始をEU首脳会議で承認する権利があるとは思わない」と付け加えた。

ドイツ連邦議会のマティーアス・ヴィスマン欧州委員会委員長(CDU)は、2007年に予定されているルーマニアとブルガリアのEU加盟も疑問視した。「ルーマニアとブルガリアが加盟基準を満たさない限り、ドイツ連邦議会は両国の加盟を批准するわけにはいかない」と委員長は『ヴェルト日曜版』Welt am Sonntagに語った。

シュレーダー首相のEU財政問題での譲歩姿勢もキリスト教民主同盟・社会同盟の憤激を呼んだ。キリスト教社会同盟のミヒャエル・グロース議員団長は、EU憲法の危機を受けてドイツのEU拠出金増額を認めた首相の対応を「スキャンダル」と評した。ハンス・アイヒェル蔵相はこの批判を退け、野党には「現実感覚が欠如している」と非難した。

自由民主党のグイード・ヴェスターヴェレ党首は、フランスとオランダの国民投票の否決後も「引き続きこのまま」進めることに警鐘を鳴らし、ドイツでもEU憲法の国民投票を実施するよう主張した。「議会での欧州憲法の批准は重要であるが、十分ではない」と同党首はN24のインタビューで述べた。

同盟90/緑の党のクラウディア・ロート代表は、土曜日の晩ドイツ第一放送ARDのニュース番組「ターゲスシャウ」で、キリスト教民主同盟・社会同盟のEU政策はEUのみならずドイツの利益をも損ねていると批判した。キリスト教民主同盟と社会同盟はEU政策で「180度の方向転換」を行ったのだ、とロート代表は語った。

世論調査機関ポリスpolisが『フォーカス』誌Focusの委託で行った調査では、ドイツでも欧州統合に対する懐疑の声が高まっている。調査によればEU憲法賛成は44パーセント、反対は39パーセントで、フランス、オランダの国民投票前にインフラテストInfratestが行った世論調査の52パーセント対32パーセントに比べて、賛否の差が縮まっていると同誌は伝えている。

原題:Neuer Streit um EU-Beitritt der Tuerkei




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