2014年6月10日(火)
ドイツ通信社 dpa
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、EU各国首脳と欧州議会に対して、欧州委員長人事を話し合いで決定し、威嚇的な言辞を控えるよう呼びかけた。
この件で批判的な態度を取っているイギリスのデイヴィッド・キャメロン首相を名指しすることなく、メルケル首相は火曜日、スウェーデンでキャメロン首相との会談を終えて、すべての懸案は合意点を模索するというEUの精神に則り決定されねばならないと語った。
「威嚇的な言辞はこれに含まれない」とキリスト教民主同盟(CDU)の党首を務めるメルケル首相は、スウェーデンのハルプズントでキャメロン首相ならびにオランダのマルク・ルッテ首相、スウェーデンのフレーデリック・ラインフェルト首相との協議を終えて警鐘を鳴らした。私にとってユンケル氏は「欧州委員長に相応しい人間」であるとメルケル首相は強調した。キャメロン首相はルクセンブルク出身のユンケル氏の欧州委員長任命に反対している。
「これはドイツとイギリスの間の争いなどではない」。ともに解決を見出さねばならないのだ、とEUのヘルマン・ファンロンパイ常任議長(大統領)は火曜日ブリュッセルで警告した。
メルケル首相とキャメロン首相とは対照的に、ラインフェルト首相とルッテ首相はスウェーデンでの首脳会合ではむしろこの問題について控え目な態度を示した。しかし自動的に筆頭候補が欧州委員長になるなどと考えてはならない、とルッテ首相は述べた。ルクセンブルク出身のユンケル氏が筆頭候補となった保守系会派は5月末の欧州議会選挙で第一党となった。この結果を受けて欧州議会はユンケル氏を欧州委員長に任命するようEU各国政府に求めている。しかし数ヶ国の首脳はこれに反対している。
キャメロン首相はEUの改革を図る人を欧州委員長に望んでいる。イギリス政府によれば、月曜日に野党労働党もユンケル候補に反対を表明したという。キャメロン首相は欧州議会選挙の後、EU各国首脳との会合の席で、もしユンケル氏が欧州委員長に任命されれば英国はEUを脱退すると嚇したと伝えられている。
キャメロン首相はハルプズントで、英国は2017年に国民投票を行ってEU残留の是非を問うと述べた。もしそれまでにEUの改革が行われ、EUの柔軟性が高まり、加盟国の権限への介入が少なくなれば、EU残留に向けた好材料となるだろう、と首相は語った。一方でキャメロン首相は、欧州理事会、すなわちEU加盟国の首脳が欧州委員長の候補者を提案するのだと強調した。
メルケル首相は、EU各国首脳が欧州議会に対して欧州委員長人事を提案することになっているが、欧州議会もEU条約で権限拡大が図られていると指摘した。「賢明な振る舞いを心掛けるのであれば、私たちは異なる機関としてお互い敬意を払うべきである」。今後この問題で争いが起こらないよう、双方が手続きAgendaで合意しておく必要がある、とメルケル首相は語った。
ルクセンブルク出身のユンケル委員長候補をめぐる議論にもかかわらず、メルケル首相は速やかな進展を予告した。「6月末に人事を協議するというタイムスケジュールは依然生きている」と首相は述べた。
スウェーデンで行われた二日間のミニ首脳会議では人事ではなく政策が議論された、と参加四ヶ国の首相は語った。「私たちがここに集まったのはEUの将来の政策について協議するためだ」とキャメロン首相は強調し、参加者全員が競争の拡大、一層の自由貿易による貿易障壁の撤去、構造改革、ならびにデジタルの域内市場の発展を支持した、と述べた。
四ヶ国首脳は、他のEU加盟国でお金を稼ぐ労働環境の改善も訴えた。しかしこれが社会保障システムの悪用につながってはならないとも釘を刺した。メルケル首相は「私たちはEUにおける移動の自由を支持するが、それが悪用されぬようあらゆる策を講じるつもりである」と語った。
これまで四ヶ国は政策の問題で良好な協力を行ってきた、とイギリスのキャメロン首相は述べたが、あわせて「これからはしっかりと前を見て、誰が正しい人なのかを見極める必要がある」とも語った。
原題:Merkel warnt vor Drohungen in Juncker-Streit