2014年6月26日(木)20:25

EU首脳会議はユンケル欧州委員長候補をめぐる論争で分裂

ドイツ通信社 dpa

英国のキャメロン首相はEU首脳会議で孤立を深める。しかし欧州委員長人事をめぐる論争では強硬な姿勢を崩していない。EU首脳会議の開幕にあたり、加盟国首脳は第一次世界大戦の犠牲者を追悼した。

イギリスのデイヴィッド・キャメロン首相はEU首脳会議の席で、欧州議会で勝利した保守系会派のジャン・クロード・ユンケル筆頭候補を厳しく批判し、大きな軋轢を呼んだ。キャメロン首相は、金曜日に予定されているユンケル候補の欧州委員長指名は誤りであるとして、EU各国首脳を非難した。しかしドイツのアンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟CDU)はイギリスに歩み寄りを示し、実質的な譲歩を行う意思を示した。EU加盟国首脳は木曜日、ベルギーのイーペルに集まり、100年前の第一次世界大戦の開戦を想起した。二日間にわたる首脳会議では他にもウクライナ危機とロシアとの緊張関係が重要な議題となる。

「私は英国が建設的な協力関係の道を見出してくれるものと期待している」と社会民主党に属するマルティーン・シュルツ欧州議会議長は述べた。キャメロン首相はBBC放送で、会議二日目にユンケル候補の採決に持ち込むと語った。これは確かに認められているが、初の事態となる。これまで欧州委員長候補者はEU首脳会議の合意で決められていた。

「あなたがたは欧州委員長を選ぶという加盟国首脳の権利を放棄しようとしている」「これは誤りだ」とキャメロン首相は主張した。首相は2017年にEU残留を問う国民投票を実施する予定である。

ルクセンブルクのユンケル前首相は5月末の欧州議会選挙で欧州委員長候補として最も大きな支持を得た。ユンケル前首相の所属する欧州人民党(EPP)は最大勢力となった。公にキャメロン首相を支持しているのはもはやハンガリーのヴィクトル・オルバン首相だけである。メルケル首相はユンケル候補を支持している。

ユンケル候補(59歳)は11月から、強い権限を持つ欧州委員会を率いることになる。欧州委員会は一種の執行機関で、唯一法案の提出権を持つ。

メルケル首相は英国に譲歩することも考えられると述べた。たとえば今後のEU政策の方向性である。メルケル首相はこの点で「大きな共通性」を認めている。「この点で英国と適切な妥協点を見出し、一歩英国に歩み寄ることができると考えている。」

EU主要ポストをめぐり、これ以上の反目や軋轢を避けるために、加盟国首脳は夏休み前にも大筋を決定する意向である。アイルランドのエンダ・ケニー首相によれば、EU各国首脳は7月17日に臨時首脳会議を開く意向であるという。その席で欧州委員会副委員長を兼務するキャサリン・アシュトンEU上級外交代表の後任が決定される、と外交筋は補足した。ヘルマン・ファンロンパイEU常任議長(EU大統領)の後任も決まるかは不明であるという。ベルギー出身のファンロンパイEU常任議長の任期は今年11月までとなっている。

EU加盟国首脳はイーペルのメーネン門に集まり、英国の記念碑に花輪を捧げ、新たな平和祈念碑の除幕式を執り行った。イーペルとその近郊では1914年から1918年までおよそ100万人の兵士が命を落とした。「私たちは意見の相違はあるが、その解決は戦場ではなくテーブルで行うのだ」と欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長は語った。

経済危機の影響を克服すべく、EUは今後投資を盛んにし、改革を推し進める意向である。「そのためには安定成長協定の現行規定の柔軟性を最大限活用すべきである」と今後5年間のEU政策方針案は打ち出している。EU加盟国首脳はこれについてイーペルの晩餐会で協議を行った。

フランスとイタリアが成長に向けた公共投資を財政赤字から除外するよう求めるなど、ユーロ安定協定は批判を浴びている。しかしドイツ政府は安定協定の修正を拒否している。

ドイツ通信社dpaが入手した首脳会議草案でも安定協定修正に関する文言はない。安定協定の柔軟運用とは、基準を上回る赤字国に対して、具体的な改革計画と引き換えに、財政健全化に向けた取り組みで裁量の余地を広げることである。

2019年までの長期計画ではまた、EUはエネルギー供給でロシアの石油とガスから一層の独立を図らねばならないとしている。これも首脳会議の議題となるとみられる。しかしエネルギーの安全に関する決定は10月の首脳会議に行われる予定である。

金曜日にはウクライナ、グルジア、モルドバとの間でパートナーシップ協定が調印される。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は緊張の続くウクライナ情勢についてEU加盟国首脳と協議する予定である。

首脳会議ではロシアに対する制裁強化についても討議が行われる。メルケル首相はコルトレイクで開かれたEPPの会合の枠外で「私たちはしたがってどこまで制裁を推し進める必要があるか、あるいは今後数時間のうちにどれほどの進展があるかについて協議するつもりだ」と語っている。ポロシェンコ大統領はストラスブールの欧州議会で、ウクライナの緊張を緩和するためにロシアに一層の努力を求めた。「私は平和プロセスを言葉だけでなく行動で支持するようロシアに要求する」とポロシェンコ大統領は訴えた。

原題:Streit um Juncker spaltet EU-Gipfel




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