2014年6月27日(金)21:18

ユンケル氏がイギリスの反対を抑え新たな欧州委員長に

議論を呼んだジャン・クロード・ユンケルの欧州委員長候補指名の後、EU加盟国首相はEUの断裂修復に努める

ドイツ通信社dpa

EU首脳会議で加盟国首脳は、ユンケル欧州委員長候補に採決で反対票を投じた英国のデイヴィッド・キャメロン首相に対し、歩み寄りを示した。閉幕宣言にはさらなるEU統合を望まない国の権利を承認することが盛り込まれた。

「英国は将来のEUの発展に若干の危惧を表明した。この懸念に対し対処する必要がある」と閉幕宣言は記している。

ハンガリーもユンケル候補(59歳)の11月からの欧州委員長就任に反対した。アンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟CDU)を含む26カ国の首脳はユンケル候補に賛成票を投じた。採決による指名はこれまで例がない。従来欧州委員長候補はEU加盟国首脳の合意で決まっていた。

ルクセンブルク前首相のユンケル候補は7月16日に欧州議会の承認を得る必要がある。承認には751議席中376議席以上の賛成が必要となる。社会民主党系会派がすでに支持を示唆しているため、ユンケル氏がこのハードルを越える見込みは高い。ユンケル氏の所属する欧州人民党(EPP)は欧州議会の最大会派である。キャメロン首相はたびたび、ユーロ救済を行ったユンケル氏が欧州委員長にふさわしくないと述べていた。

キャメロン首相へのもう一つの慰謝料は、今後のEU主要人事は1国でも反対があれば決定しないという申し合わせである。これは首脳会議の枠外で確かな筋から発表された。EUは秋までに包括的なEU主要人事案で合意する必要がある。これにはキャサリン・アシュトンEU外交上級代表の後任やヘルマン・ファンロンパイEU常任議長(EU大統領)の後任も含まれる。両者はEU首脳会議の全会一致で任命されることになる。この人事は7月16日の臨時首脳会議で合意が図られる見込みがある。

数週間におよぶユンケル候補をめぐる論争を踏まえ、EU加盟国首脳は将来の欧州委員長の決定手続きについて、もう一度考え直す意向である。閉幕宣言には、首脳会議は「将来の欧州委員会委員長の任命手続きを、EU諸条約を尊重しながら熟考する」とある。メルケル首相は、「英国の懸念を受けとめる」。欧州統合では「すべての国が同じスピードで進む」必要はない、と語った。

ウクライナ危機ではEU首脳会議は口調を強め、ロシアに対して72時間の最後通告を行った。明日(6月30日)までにロシアはウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領の和平案について「実質的な交渉」を開始しなくてはならない、と要求した。

7月中旬の臨時首脳会議ではEU加盟国首脳はさらなる対ロシア制裁を協議する意向である。しばらく前からロシアに対する経済制裁が検討されている。これまでEUは61人に対してEU圏への入国禁止と口座凍結を科した。「こうしたいろいろな段階の制裁が考えられる」とメルケル首相は述べた。

首脳会議でEU加盟国首脳はウクライナとの間で、長年論議を呼んできたパートナーシップ協定の調印を行った。これは密接な経済および政治分野の協力を定めたものである。政治部分はすでに3月に調印されている。グルジアとモルドバ共和国もこの連合協定に調印した。この三カ国は将来のEU加盟を考えているが、協定では加盟は約束されていない。

キャメロン首相は、メルケル首相のユンケル候補支持に失望したかとの質問に対して、「もちろん私たちは今日は対立する立場で、これは残念に思うところだ。(…)よくあることだ」。だが重要なのは自分の信念を曲げないことだ。「戦争に勝つためには、ときに戦闘に敗れる覚悟が必要だ」と語った。

5月末の欧州議会選挙では、初めて各会派が欧州委員長候補者として筆頭候補を立てた。これによって欧州議会は人事に対する影響力を大幅に拡大した。EU条約によれば、欧州委員長は選挙結果を考慮してEU首脳会議で指名され、欧州議会の採決で承認される必要がある。キャメロン首相はこの過程に加盟国政府の権限が空洞化される危険を認めている。欧州委員長の任期は5年である。欧州委員会はEUの執行機関であり、唯一法案を提出する権限がある。

EU経済政策の方向性をめぐる綱引きで、EU加盟首脳は加盟国の予算に対する安定協定を支持した。「私たちは安定成長協定を尊重する」と閉幕宣言は述べているが、この一文は新たに付け加えられたものである。一方で赤字国には一層の裁量余地が認められ、EUの支援金をさらに効率的に用いることが許される。外交筋によれば、これは成長と投資の促進を強く求めるイタリアなどに配慮したものであるという。バローゾ欧州委員長は「安定成長協定の変更を提案した国はいなかった」と強調した。

EU加盟国首脳はまたリトアニアのユーロ圏加盟を承認した。バルト三国のリトアニアは来年1月1日に19番目のユーロ加盟国となる予定である。

原題:Juncker wird gegen britischen Widerstand neuer Kommissionschef




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