フランクフルター・ルントシャウ紙 2015年6月1日
ペーター・リースベック記者
欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長はハンガリー右派政権のヴィクトル・オルバン首相に対し、「死刑制度を導入する国にEU内の居場所はない」と、明確な言葉で警告した。
ブリュッセル
ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相に対する欧州委員会の苛立ちは今に始まったことではない。しかし今回の警告は初めてである。「死刑制度を導入する国にEU内の居場所はない」と欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長は月曜日のズュートドイチェ・ツァイトゥング紙Suddeutsche Zeitungに語った。
ユンケル委員長は即座にドイツ政府の支持を得た。「死刑制度の廃止は2004年のハンガリーEU加盟の前提条件のひとつであった」とアンゲラ・メルケル首相の広報官は述べ、私は「ハンガリーが自ら約束した義務を詳細に認識している」ものと考えていると付け加えた。つまり死刑制度の擁護者は残念ながらEUから出ねばならないということである。
オルバン首相は4月に起きた強盗殺人事件を受けて、ハンガリーの死刑制度復活を検討すると声高に語り、「死刑制度の件はハンガリーの議事日程に乗せるべきである」と述べた。憤激は大きかった。最近では欧州委員会のフランス・ティメルマンス副委員長が欧州条約の第7条を引きながら、EU諸委員会におけるハンガリーの議決権停止を警告した。
これは2週間前のストラスブール欧州議会での出来事であった。オルバン首相も出席していた。過去数年間と同様。というのも「ハンガリーの憂慮すべき情勢」が議題にのぼっていたからである。またしても。2011年オルバン首相は欧州議員を前に、異論あるメディア法について弁明しなければならなかった。2013年にはルイ・タヴァレス欧州議員がオルバン首相に対してハンガリーの憂慮すべき情勢を指摘した。しかしオルバン首相は聞く耳を持たない。先日は難民収容施設を訪ね、「あそこで暮らしている連中を送り返す必要がある」と述べている。
欧州委員会は憲法裁判官の任命とメディア法をめぐる論争の際は、EU補助金の凍結をもってオルバン首相に警告を行った。
オルバン首相は譲歩した。いつも必要最低限の譲歩である。今回ユンケル委員長は厳しい警告を行った。EUは価値共同体であるというのである。ラトヴィアのリガで開かれた2週間前のEU首脳会議ですでに委員長は注目を集めていた。
ユンケル委員長は陽気な口調でオルバン首相に「独裁者」と呼びかけたのである。一方オルバン首相はルクセンブルクのユンケル委員長に向かって「大公」と応じた。周囲の当惑は大きかった。ユンケル委員長の広報官は「二人は数年来の知り合いだから」と述べて鎮静化を図った。
しかし事態は好転しなかった。ユンケル委員長が所属する欧州議会の欧州人民党(EVP)のキリスト教民主系議員にとっても同様である。EVPにはオルバン首相のフィデスの議員も所属している。
EVPは制裁を行いたくない。しかしオーストリアのオーストリア自由党(FPO)は手回し良く新たな家を提供している。マリーヌ・ルペンとヘールト・ウィルダース率いる右翼大衆迎合グループである。すてきな仲間たちである。
原題:Streit um Todesstrafe
Juncker droht Ungarn mit EU-Rauswurf