2016年6月24日(金)21:48
南ドイツ新聞 Sueddeutsche Zeitung
欧州委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長は多彩な比喩や当意即妙の表現が得意である。英国がEUからの離脱を決めた今、英国とEUの関係を長いこと関係にひびが入っていた夫婦に喩えた。
「円満な離婚ではない。だが一度たりとも親密な恋愛関係もなかったのだ」とユンケル委員長は金曜日の晩、ドイツ第一テレビARDとのインタビューで発言し、離婚届を直ちに提出するよう英国政府に求めた。
冷めた響きである。「別れたいのなら、さっさとしてくれ」と聞こえる。ユンケル委員長は、なぜ離婚届を出すか出さないか決定するのに英国政府が10月までかかるのか理解できないと言う。「できればすぐにも離婚届をいただきたい」。私は投票結果を深く悲しんでいる。しかし英国は国民投票でEUを脱退すると明確に決定したのであり、EUというプロジェクトは引き続き進むのだ、とユンケル委員長は述べた。
欧州議会のマルティン・シュルツ議長(社会民主党SPD)の発言はさらに明確である。キャメロン首相が数ヶ月もかけるというのは「言語道断」である。それにより「再びヨーロッパ大陸全体が英国保守党の党内駆け引きの人質に取られてしまう」。すでにキャメロン首相は3年前、保守党内の反対派を静めるべく英国のEU離脱国民投票の実施を発表した時、「自分の交渉戦術のために大陸全体を拘束した」のだ、とシュルツ議長は述べた。
キャメロン首相の意向どおりに進めば、脱退交渉は10月まで始まらないことになる。首相は今後3ヶ月間で経過措置を準備する意向である。すなわち新たな首相の選任であり、場合によっては今年中の下院の改選である。後任の首相が決まってからEU離脱の形態に関する交渉を行う、とキャメロン首相は述べる。
離脱キャンペーンのリーダーの一人で、キャメロン首相の後任とも取りざたされるボリス・ジョンソン前ロンドン市長も、EUとの離脱交渉を「急ぐ理由はない」と強調している。
離脱手続きはEU条約の第50条に定められている。「どの加盟国もその憲法上の規定に従い、連合からの離脱を決定することができる」。まず離脱の意志を他のEU加盟国に明確に伝える必要がある。これがユンケル委員長の言う「離婚届」である。それを受けてはじめて第50条の「離脱の詳細」に関する公式の交渉が開始できる。
だがこの交渉はEUからの離脱を規定するものであり、将来のEUとの関係のあり方を規定しているものではない。今後の関係については別に協議が必要となり、その決定には欧州議会の承認と欧州理事会での特定多数の承認が必要となる。具体的にはEU加盟国の72パーセント以上、かつEU人口の65パーセント以上の賛成が求められる。さらに時間的制約もある。交渉の期間は2年と定められている。この期間延長には全EU加盟国の承認が必要になる。
原題:Jean-Claude Juncker: "War ja auch nie ein enges Liebesverhaeltnis"