2004年3月23日(火)20:12
ワルシャワ/ベルリン(ドイツ通信社)
ドイツのゲルハルト・シュレーダー首相とポーランドのレシェク・ミレル首相は、将来のEU憲法をめぐる論争で合意が可能と見ている。「妥協は必要不可欠なだけでなく、可能でもある」とミレル首相はワルシャワでシュレーダー首相との会談を終えて語った。
両首脳の会談を受けてドイツ政府は、今年の上半期中にも交渉停止中のEU憲法を成立に導くことができるとの楽観的見通しを明らかにした。「全加盟国が歩み寄りの姿勢をもって協議に臨む意向である」とベルリンのドイツ政府筋は述べている。
ミレル首相は、欧州憲法は一層の自由と安全をもたらし、マドリードの列車テロ以降はこれまで以上に緊急性が高まっている、と述べた。「マドリードのテロはEUのあらゆる価値を脅かすものである」。ポーランド政府は憲法論争の解決に向けて対話を行う用意がある、と語った。シュレーダー首相とミレル首相は、両国の外相が議長国アイルランドを支援し、解決案を模索することで合意した。
シュレーダー首相は二重多数決制原則の維持という自らの姿勢を強調する一方、ポーランドの比重が閣僚理事会の意思決定で完全に反映されねばならないとするポーランドの要求にも理解を示した。「私たちは、(二重多数決制の)目標を放棄することなく、ポーランドにとって重要な原則を実現化する可能性があると考える」。詳細や比率については話題に上らなかった、と首相は語った。
シュレーダー首相もミレル首相も、アイルランドの議長任期中、すなわち遅くとも6月末までに、欧州憲法の妥協案が得られるものと考えている。フランスのジャック・シラク大統領も月曜日に同様の発言を行っている。
現在検討されているのは、加盟国の55パーセント以上が賛成し、かつ賛成国の人口の総計がEU全体の55パーセント以上の場合にEU閣僚理事会の決定が成立するという案である。12月の首脳会議で決裂した憲法草案では、50パーセント以上の賛成国と60パーセント以上の人口という二重多数決制が提案されていた。
ドイツ政府筋によれば、木曜日と金曜日にブリュッセルで開かれるEU首脳会議ではこうした争点に関する具体的な交渉は行われない見込みである。その理由は、まだ任期中のスペインのホセ・マリア・アスナール首相が出席するためであり、おそらく今後の手順を決めるに留まるという。
ミレル首相の私邸で開かれた昼食会で、両首脳はテロとの戦いおよびドイツ・ポーランドの協力関係についても意見を交わした。ミレル首相はポーランドのEUおよびNATO加盟に対するドイツの支援を高く評価し、この夏ワルシャワで行われるワルシャワ蜂起*)60周年記念式典にシュレーダー首相を招待した。一方シュレーダー首相はミレル首相に対し、終戦時に故郷を放逐されたドイツ人が起こしているポーランドに対する個人的な補償要求**)について、ドイツ政府は一切支持しないことを約束した。
原題:Berlin optimistisch ueber schnellen Erfolg bei EU-Verfassung
*) 訳注:第二次大戦末期の1944年8月1日にワルシャワで起きた占領ドイツ軍に対するポーランド国民軍の蜂起。頼みのロシア軍の援護を得られず、10月2日に鎮圧された。
**) 訳注:これに関しては2月21日のニュース「故郷放逐ドイツ人はポーランドに残した財産の返還を要求」(http://ecowww.leh.kagoshima-u.ac.jp/staff/nakajima/e-februar%2004/21.02.html)
および、3月17日の「フェアホイゲン拡大委員はドイツ・ポーランド関係を懸念」(http://ecowww.leh.kagoshima-u.ac.jp/staff/nakajima/e-maerz%2004/17.03.EU.html)を参照。