2002年5月21日(火)16:44

ベネシュ布告をめぐる論争はくすぶり続ける

フランクフルト・アム・マイン(AP)

ズデーテンドイツ人の放逐に関するベネシュ布告の撤廃をめぐる論争で、キリスト教社会同盟(CSU)はチェコ政府に対してあらためて譲歩を求めた。CSUのトーマス・ゴッペル幹事長は火曜日、チェコは緊急に対応する必要があると述べた。

キリスト教民主同盟・社会同盟のエドムント・シュトイバー首相候補は、ズデーテンドイツ人大会でベネシュ布告の撤廃をチェコのEU加盟の条件とするよう求めたという報道を否定した。社会民主党(SPD)はシュトイバー候補の演説を「大衆迎合的スタンドプレー」と批判した。

ゴッペル幹事長はAP通信に対し、チェコのEU加盟前に同布告の法的許容性を審査するよう求めたドイツの欧州議員の提案に欧州議会が応じた事実は、緊急に対応する必要があることを示している。この審査を不要にするか否かはチェコ政府次第である、と述べた。さらに幹事長は「他の人々を二級の人間と宣告するか否かという問題は自分自身で解決しなくてはならない」と付け加えた。幹事長はチェコ政府を、この間相互で確認された合意を再び無視しているとして非難した。

ミロシュ・ゼマン首相が選挙戦上の理由から昔の戦線に戻るよう呼びかけるならば、「反響の大きさに驚く必要はない」、とゴッペル幹事長は、ニュルンベルクにおける日曜日のキリスト教民主同盟・社会同盟のシュトイバー首相候補の発言を弁護した。

この間バイエルン州政府は、シュトイバー州首相はズデーテンドイツ人大会で「ベネシュ布告とチェコのEU加盟を結び付けたわけではない」ことを強調した。広報官は「そのような結び付けは現在でも過去においても州政府の政策ではない」と強調した。

連邦議会のSPD議員団のゲルノート・エルラー副団長は、シュトイバー候補の演説は「CSUのお得意さんを前にした大衆迎合的スタンドプレー」であると評した。シュトイバーは「責任ある政治家ならば融和を図らねばならない問題で火に油を注ぐかのような」振る舞いをした。これによりシュトイバーは、「似たようなことをオーストリアで行っているイェルク・ハイダーと席を連ねた」。シュトイバーは右翼大衆主義者であることをカミングアウトしたのだ、とエルラーは西部ドイツラジオ(WDR)で語った。これに対しゴッペル幹事長はエルラーが不適切な発言をしたとして批判した。幹事長は、連邦議会で勝利した場合、「CSUの代表とキリスト教民主同盟・社会同盟の首相の間で対話の姿勢に欠ける」ようなことはないだろう、と述べた。

ゴッペル幹事長は、この問題ではズデーテンドイツ人大会でオットー・シリー内相がSPDと緑の党の連立政権として初めてベネシュ布告撤廃要求に加わってから、歩み寄りが見られる、と強調した。これに対しエルラーSPD副議員団長は、シリー内相がブーイングを浴びながら演説で強調したのは、布告撤廃と補償要求を結び付けないという点である、と指摘した。

EU拡大担当のギュンター・フェアホイゲン欧州委員の広報官、ジャンクリストフ・フィローリは、EUとチェコはすでに4月の段階でベネシュ布告を加盟交渉の対象としないことで合意している。ただ、放逐に荷担した者の刑の免除を保証した1946年の特赦法*)についてのみ、目下EU法との適合性が審査されているところである。不都合の場合にはチェコは自国の法律をEU法に適合させる義務を負っている。チェコとの加盟交渉は計画どおり2002年末に完了し、同国は2004年にEU正式加盟国となる予定である、とAP通信に語った。

原題:Streit um Benes-Dekrete schwelt weiter - Erste Zusammenfassung

*)訳注:一連の布告のうち、「チェコ人およびスロヴァキア人の自由の回復をめぐる闘いに関係する行動の合法性に関する1946年5月8日の法律」(公布は同年6月4日)を指すと思われる。これは「1938年9月30日から1945年10月28日までに行われたチェコ人とスロヴァキア人の自由の回復をめぐる闘いに寄与することを目標とする行動、あるいは占領者またはその支援者の行為に対する正当な報復を目標とする行動は、たとえ他の現行規定で違法とされている場合でも違法としない。」(第一条)と定め、ドイツ人に対する犯罪的行為(殺害や放逐)を合法的としている。




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