2003年5月15日(木)16:26
ブリュッセル(AP)
欧州憲法草案の発表期限を5週間後に控え、EU改革会議*では依然コンセンサスは得られていない。105名の改革会議メンバーは木曜日ブリュッセルにおいて、個々のEU諸機構に関する議長団の提案について初の協議を行った。とりわけ激しい議論があったのは、改革会議のヴァレリー・ジスカールデスタン議長の提案のように、将来は数年任期で選出される欧州理事会議長**をEUの長に置くか否かという問題である。
議長団提案については1,500件の修正要求が出されている。議長団提案では欧州理事会議長は2年半任期とし、加盟国の特定多数決で選出されるとされている。議長候補となれるのは加盟国の大統領や首相、もしくは少なくとも2年間欧州理事会のメンバーであったものとしている。
改革会議のドイツ代表をつとめるヨシュカ・フィッシャー外相は、議長団提案を「良い叩き台」と評した上で、だが欧州理事会は欧州委員会と競合してはならないと述べた。外相はEU議長の選出については、個々の機構間のバランスが保たれるならば「有意義」と評した。連邦参議院を代表して改革会議に加わっているバーデン・ヴュルテンベルクのエルヴィーン・トイフェル州首相は、ジスカールデスタン議長の構想を歓迎する旨を述べた。
これに対し、他の幾名かは欧州理事会議長に関する提案を批判する発言を行った。ジャック・サンテール前欧州委員長はベネルクス三ヶ国の意見を代表する形で、このような議長職に断固反対する旨を強調した。とりわけ中小の加盟国は、常任の議長職が欧州委員会の弱体化を招くとの危惧を抱いている。
EU外相職の新設も議長団提案に盛り込まれている。提案ではEU外相は加盟国により特定多数決で選出され、欧州委員長の承認を経て任命される。EU外相はEU共通外交安全保障政策を司り、欧州委員会の副委員長を務めるとされている。候補者としては久しく前からドイツのフィッシャー外相の名前が挙がっている。自らEU外相創設を提案したフィッシャー外相であるが、この件ではこれまでのところ沈黙を守っている。
ジスカールデスタン議長はタイムスケジュールを守るよう呼びかけた。「6月20日までに完全な案を得るのは非常に難しいだろうが、これがデッドラインである。」EU首脳会議の決定では、改革会議は6月20日のテッサロニキにおけるEU首脳会議に憲法草案を提出することになっている。現在EU議長を務めるギリシャのゲオルギオス・パパンドレウ外相も木曜日、この期日を守るよう述べた。
フィッシャー外相も、作業を6月20日までに完了せねばならないと勧告した。「もし私たちがタイムスケジュールを守れなければ、解決がきわめて困難な問題を生み出すことになってしまうと思う。」しかしながら改革会議の幾人かのメンバーはこのような時間的圧力に批判を浴びせた。キリスト教民主同盟(CDU)所属のエルマー・ブローク欧州議員は、7月に期限をのばすよう要求した。パパンドレウ外相は、改革会議は首脳会議の決定を先取りすることはできないが、「いずれにせよそれを心に留め置くつもりだ」と述べた。
その後加盟国はいわゆる政府間協議の場で憲法草案について協議する予定である。目標は今年末までの憲法案可決である。新たな憲法は、EUの体制を2004年5月1日の新規10ヶ国の加盟に備えて整えるものである。ニース条約が新たな体制の整備には不充分であることはすでに明らかになっている。
原題:Weiter kein Konsens im EU-Reformkonvent
訳注:
*「EU改革会議」は正式には「EU将来像会議」。
**「欧州理事会議長」は原文ではRatspraesident。これを「議長」と訳すか「大統領」と訳すかはその職掌と権限にもよるが、ここでは「議長」の訳語をあてている。なお、「欧州委員長」も「プレジデント」(EU-Kommisionspraesident)である。