2006年5月16日(火)16:59
ブリュッセル(ドイツ通信社dpa)
喜びの気配すらなかった。厳しい表情で欧州委員会のオリ・レーン拡大担当委員はストラスブールの欧州議会で、ブルガリアとルーマニアが2007年1月に欧州連合に加盟する可能性があると発表した。
ただし前提条件となるのは、両国がこの秋までに、本来はとうに済ませておかねばならなかった改革の宿題を行うことである。新たな加盟国を迎える感激も欧州議員の間に沸き起こることはなかった。レーン委員とジョゼ・マニュエル・バローゾ欧州委員会委員長は両国政府に対して、事態が早期に予想される加盟にもかかわらず深刻であることを伝えるため、その晩のうちにソフィアとブカレストに向かった。
25ヶ国から27ヶ国への自動的拡大Automatismusに責任があるのは、不吉な「ブリュッセル」でもなく、「欧州(EU)」の浮世離れした官僚でもなく、もちろんレーン委員でもない。2002年12月のコペンハーゲン首脳会議で、欧州連合は2007年にブルガリアとルーマニアも受け入れることを目標とすると決定したEU各国首脳に責任があるのである。それ以来列車は停止できなかった。今日ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)のドーリス・パック欧州議員は、これは加盟国政府の「誤り」であったと述べる。
2005年に調印された加盟条約では、両候補国がEU基準の達成に向け準備が整わない場合は加盟を2008年に延期することができると定められている。しかしいずれにせよ2008年にはEUに加盟できるとの安心感から、両国は改革努力を怠った、と欧州委員会は見ている。レーン委員は「例のない変化」や「注目すべき努力」を称賛したものの、組織犯罪やマネーローンダリング(資金洗浄)、EU補助金を管理する組織体制の不備が依然根本的な問題として残っていると指摘した。独立した司法制度の確立も不十分であり、ロマをはじめとする少数民族の保護も不十分である、と委員は批判した。
そこでレーン委員は、ひとまずブルガリアとルーマニアの加盟を認めるものの、保護条項を適用して加盟の恩恵に与らせない可能性もあると警告した。たとえば、獣医によるきちんとした検査なしには農産物の輸出を認めない。また適正な経理なしにはEU補助金を支給しない。これらは多くのケースのうち、ごく僅かの例にすぎない。
欧州委員会は、ルーマニアとブルガリアを26番目、27番目の加盟国として迎えることには疑いの余地を示さなかった。しかし2004年5月の新規10ヶ国への拡大以降、EUの情勢は変化した。EU憲法プロジェクトの頓挫だけではない。次期拡大としてクロアチアやトルコとも交渉を開始したEUの膨張に対し、多くの加盟国から厳しい眼差しが注がれるようになったのである。
レーン委員がこの問題を真剣に取り扱ったことは幾人かの欧州議員が証明している。レーン委員が、両国への改革圧力を弱める恐れのある2008年への加盟延期を避けようと努力したことは明らかであった。かつて欧州議会の議長を務めた、社会民主党のクラウス・ヘンシュ欧州議員は、「加盟基準を達成できないことが明らかな目標期日を設定して、各国政府が加盟条約を交渉し、調印したことは、レーン委員の責任ではない」と弁護した。
今EU内では「二級の加盟」という言葉が囁かれている。ブルガリアとルーマニアが加盟後も、EU法の実行に関して前例のない厳格な監督の下に置かれることだけではない。そのいくつかについては加盟時点から適用される可能性のある、保護条項というダモクレスの剣も、両国の頭上に吊り下げられているのである。しかしレーン委員は、「この条項はもちろん加盟後も適用される可能性がある」と述べている。これについてジョゼ・マニュエル・バローゾ欧州委員長は、「EUは自らの約束を果たさねばならない。だがクラブの規則は尊重しなければならない」と語った。
原題:Analyse: Keine Freude im europaeischen Club