2011年5月27日(金)

セルビアのEU加盟への長い道のり

ブリュッセル(dapd)

ユーゴ内戦の戦犯容疑者ラトコ・ムラディッチの身柄拘束により、セルビアは内戦以来の最も重要な政治課題の実現、すなわち欧州連合加盟に向け、最大の障害を取り除いた。この16年間いつEUの代表が加盟の件でセルビアを訪れようとも、質問は決まって「ムラディッチ容疑者はどこか?」であった。

しかしムラディッチが拘束されたことにより、セルビアに対するEUの姿勢は好転した。だがセルビアはEU加盟に向けてなおいくつかの障害を克服せねばならない。加えて加盟には保証がない。他の国々同様、EUが候補国に求める自由な市場や民主主義への要求をセルビアの政治と経済が満たすまでには、数年間かかる可能性がある。農業、保健制度、司法、行政、金融市場など無数の分野について規定や新たな法律が必要となる。

加えて、1990年代の血なまぐさいバルカン戦争の時代に遡る二つの障害がある。一つはかつてのコソボ自治州の独立承認をセルビアが拒否していることである。また2004年にハーグの国連旧ユーゴ戦犯法廷から起訴されたゴラン・ハジッチ戦犯容疑者が今なお逃亡中であるという事情もある。

ハジッチはムラディッチに比べれば大物ではないが、EUはセルビアのEU加盟にあたって身柄拘束を求めている。コソボに関してはアメリカ合衆国や大半のEU加盟国を含む75ヶ国が2008年の独立宣言を承認している。しかしセルビアおよびその重要な同盟国であるロシア、ならびにいくつかのEU加盟国は独立を承認していない。コソボの承認は必須条件ではないものの、加盟に向けた手続きに大きな影響を与える可能性がある。

「関係が正常化しない限り、セルビアのEU加盟の道のりにはたびたび問題が生じることになろう」と非政府組織Independent Diplomatのバルカン専門家ニコラス・ホワイトは述べた。欧州委員会のシュテファン・フューレ拡大担当委員は、セルビアはこの道を今後も継続すべきであるとの考えを表明した。「セルビアが昨日よりも欧州連合に近づいたかと問われれば、答えは『そのとおり、もちろん』である」とフューレ担当委員はムラディッチの身柄拘束を踏まえて語った。フューレ委員は、どのEU加盟候補国も満たさねばならない要求がこの身柄拘束で不問に付されるかとの問いに対しても同様にきっぱりと答えた。「課題のリストは1つだけ減った。」

十数年にわたるムラディッチの逃亡に終止符が打たれたことはEUの指導層に強い印象を与えた。フランスのニコラ・サルコジ大統領もセルビアのボリス・タディッチ大統領に称賛の言葉を送った。「これはセルビア大統領のきわめて勇気ある決断である」とサルコジ大統領は述べ、これはセルビアの早期EU加盟の可能性に向けた一歩になると付け加えた。スウェーデンのカール・ビルト外相は「これで欧州の歴史の暗い一章に幕を引くことができるかもしれない」と語った。

また国連のボスニア・ヘルツェゴヴィナ上級代表ヴァレンティーン・インツコもセルビアにとって耳寄りな発言を行った。「セルビアはこれでEUからの反応を期待できる。誰もが加盟候補国の地位について話し始めた。」いずれにせよホワイトは確信している。「セルビアが欧州に強く結びつけられれば結びつけられるほど、1990年代の古い慣習に逆戻りする可能性はなくなる。すなわちムラディッチが体現した残虐な慣習や領土拡大志向である。」

原題:Serbiens weiter Weg in die EU




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