2016年5月9日(月)
ドイツ通信社dpa
EUとの意見の相違が拡大する状況にもかかわらず、トルコのレチェプ・タイップ・エルドアン大統領はトルコ国民に対するビザなしEU渡航とEU加盟交渉の加速を期待している。
EU加盟は依然「戦略的目標」である。EUはトルコを50年以上も戸口で待たせており、トルコは倦怠感を感じている。シェンゲン圏へのビザなし渡航の約束は、この倦怠感を和らげ、加盟交渉を加速するものと期待している、とエルドアン大統領はEU創立記念日にあたって演説した。
エルドアン大統領は、トルコの反テロ法の改正を求めたEUの要求を拒絶している。反テロ法の改正はEUとトルコの難民協定の重要な構成要素である。トルコ政府が求める6月末までのビザ免除の前提条件であるからだ。難民協定は辞任するアフメット・ダウトオール首相がEUとの間で取りまとめたものである。
ビルト紙Bildの報道によれば、EUではトルコとの難民協定の破棄に対する懸念が拡大しており、EU加盟数ヶ国の首相はすでに対案について協議を始めているという。たとえば、もしトルコ政府が国境を開いて難民をEUに送り出す挙に出たならば、ギリシャの島々を難民の主要受け入れ地とすることなどである。
そうなれば難民はギリシャの島々で審査・登録が行われることになる。併せて、ギリシャ本土とのフェリー交通も一時中止しなくてはならない。そうなると難民申請者は島に留まることになり、申請が認められなかった人々は直接母国に送り返される可能性がある、とビルト紙はEU加盟国の閣僚の発言を報じている。協定が破綻した場合、トルコ政府に対する支援は停止され、支援金はギリシャに回ることになるという。
ドイツ政府のシュテッフェン・ザイベルト広報官は、ドイツ政府はトルコとの協定が実行に移されるものと考えており憶測には関与しない、と述べた。
エルドアン大統領は、「難民の苦しみが繰り返されぬよう、また焦眉の問題に対する解決策が見出されるよう」我が国は難民問題で引き続きEUと協力していく、と語った。一方でEUに対して「テロとの戦いで断固たる姿勢を示すよう」求めた。エルドアン大統領は先週金曜日、反テロ法の改正要求に対して「我々は我々の道を行く。そちらはそちらの道を行くがよい」とEUに向けて語っていた。
原題:Erdogan hofft weiter auf Visumfreiheit und EU-Beitritt