2008年11月5日(水)15:29

メルケル首相のEU拡大阻止の警告は批判を浴びる

AFP

ドイツのアンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟CDU)は、将来のEU拡大に対し拒否権を行使すると警告したため、批判を浴びた。欧州委員会のオリ・レーン拡大担当委員はメルケル首相に対して、新規加盟国の受け入れを阻止せぬよう呼びかけた。とりわけドイツの拒否権によって、28番目の加盟国として2010年にも可能性のあるクロアチアの加盟が危うくなる、とレーン委員は警告した。またトルコの加盟問題でも新たな対立要因が生じた。レーン委員は「加盟プロセスを後戻りできないものに」する意向である。しかしメルケル首相はフランスのニコラ・サルコジ大統領と同様に、トルコの加盟を拒否している。

ドイツ、フランス、ルクセンブルクは6月のブリュッセルEU首脳会議で、リスボン条約が発効しない限りEU拡大には反対する姿勢を表明した。「私はこれが、全体として順調な進展を見せているクロアチアのような候補国の加盟プロセスを遅らせる口実に使われないよう望んでいる」とレーン委員は、拡大進展状況年次報告書の発表にあたって語った。

リスボン条約は27ヶ国を抱えるEUの行動能力を高めるものである。しかしアイルランドが6月の国民投票で批准を否決して以来、条約は凍結されている。EU各国首脳は12月中旬の首脳会議で危機打開に向けた協議を行う意向である。

レーン委員はまた、驚くほど明確な言葉でEUにとっての「トルコの重要な戦略的役割」を強調した。進展報告書は「とりわけコーカサスや中近東に関し、地域の安定を図る役割」をトルコが担っていると指摘している。欧州委員会はこの報告書により、交渉開始3年で停滞したトルコとの加盟交渉に新たな息吹を与える意向である。これは火曜日のレーン委員の演説にも表れた。委員は「トルコの加盟プロセスを後戻りできないものにする」と演説した。

加盟進展報告書は重大な欠陥も列挙している。欧州委員会はトルコ国内で拷問や虐待に関する訴えが増加し、いわゆる女性に対する名誉殺人の件数も増えている状況に「懸念」を示した。2007年の名誉殺人は220件にのぼる。またクルド人の権利や言論の自由もほとんど改善が見られないと指摘している。

レーン委員はバルカン半島のクロアチアとセルビアには、EU加盟に向けた進展の期待を抱かせた。クロアチアは2009年末に、3年前に開始された加盟交渉の最後のハードルを越えることができるという。またセルビアは来年にも加盟候補国として正式に承認される可能性があると委員は述べた。

原題:Merkels Vetodrohung gegen EU-Erweiterung in der Kritik




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