2012年11月22日(木)

EU中期予算をめぐる駆け引きは決裂の恐れ

ブリュッセル(dapd)

強硬に削減を求めるイギリス、補助金に浸かり切ったフランス、そして支払いに倦んだドイツ。中期予算を討議するEU首脳会議は開幕からヨーロッパの大国がそれぞれ対極的な立場に固執した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟CDU)は木曜日の晩、「さらに議論の場が必要になることも考えられる」と述べ、早期決着への期待を戒めた。

各国がそれぞれの主張に固執しているため、EU中期予算の規模と配分をめぐるブリュッセルEU首脳会議は決裂の恐れもある。オーストリアのヴェルナー・ファイマン首相は、「日曜日の晩も、あるいは必要とあらば月曜日も議論を続ける用意」があると述べた。

実質負担国はEU予算を是が非でも削減したいと考えているのに対し、実質受益国はEU予算の増額を求めている。正式な首脳会議の開始前、欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長とヘルマン・ファンロンパイEU常任議長は加盟国の首脳を個別に呼び、それぞれの加盟国の妥協可能な最低ラインを探った。最初のイギリスのデーヴィッド・キャメロン首相は、自国の拠出金払い戻しの維持とEU予算のさらなる減額を強硬に求める姿勢を示した。拒否権を行使して交渉を決裂させるとの威嚇はあらためて行わなかったものの、ファンロンパイEU常任議長のこれまでの予算案には「到底承服できない」と表明した。

イギリスとスウェーデンは農業国と争う

この常任議長案は、欧州委員会の予算案を800億ユーロ削減し、7年間の総額で1兆100億ユーロにスリム化するというものである。これは2007年から2013年の中期予算と比べ、クロアチアの新規加盟でまもなく加盟国が一国増えるにもかからわらず、実質値で250億ユーロの減額となる。加盟国との一連の個別協議を終えたファンロンパイ常任議長は晩に、すべての加盟国や関係機関が議論可能な新提案を交渉のたたき台として提示するという離れ業を試みる意向である。

ドイツなどの実質負担国は予算枠を9600億ユーロに制限したい意向であるが、一方でフランスは農業補助金の維持を強く求めている。フランスのフランソワ・オランド大統領は木曜日、いかなる削減も認めないとの意向を明確に表明した。これはイギリスとスウェーデンにとっては腹立ちの種である。両国は潤沢な農業補助金の恩恵をほとんど受けておらず、時代に合わない農家への補助を非難しているからだ。「あるべき姿のEUにではなく、昔の姿のEUのためにあまりにも多くの財源が費やされている」とスウェーデンのフレデリク・ラインフェルト首相は批判した。

他方、構造的に弱い東欧および南欧の受益国は、生活水準を豊かな加盟国並みに引き上げるべくEU予算の増額を求めている。「現在の予算が最善である」とエストニアのアンドルス・アンシップ首相はポーランドを盟主とする移転原則の擁護国を代表して語った。

メルケル首相はブレーキ、カタイネン首相はアクセル

ドイツ政府筋には硬直した対立状況を踏まえ、今週すぐに解決に至らなくとも「大事ではない」、来年の初頭でも構わない、「そうなってもまだ十分間に合う」と予防線を張る向きもある。現在の予算枠組みは2013年の末まで続くので、合意は来年3月までに成立すれば良いという。これに対しフィンランドのユルキ・カタイネン首相は、「ひと休みしても、解決が容易になるわけではない」と警告する。全員が譲歩しなければならない。「さもないと妥協には至らない」とカタイネン首相は戒めた。

いずれにせよ新たな財政期間にドイツがEUから受け取る金額は前より少なくなる。というのもこの間、東ドイツのいくつかの地域は経済的に発展し、最重要支援地域を脱したからである。それゆえアンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟CDU)は、実質負担国の間で経済力に応じた「公正な負担均衡」をはかるよう要求している。これまでドイツはEU予算の20パーセント弱を拠出しており、二位以下を大きく引き離して最大の拠出国となっている。国民総所得比ではイタリア、ベルギー、オランダがドイツ以上の拠出をしているが、最大の拠出金はベルリンからブリュッセルに振り込まれている。

キャメロン首相は拒否権を行使すると警告したことにより、みずから予算合意を妨げる最大の障害となり、戦略的にも袋小路に陥った。残された方法は、イギリスの拠出金減額を要求する自らの党を恫喝するか、すべてイギリス以上に拠出する意向のEUの仲間を恫喝するかのいずれかである。フィナンシャル・タイムズ紙は木曜日、キャメロン首相はこのジレンマのため9400億ユーロの中期予算枠の上限を受け入れる可能性があると推測した。これはドイツの要求より200億ユーロ少ない額である。

「速やかな合意ができるほど各国が近寄っている状況ではない」とルクセンブルクのジャンクロード・ユンケル首相は合意に対する期待を戒めた。イギリスをいかに説得したら良いかはユンケル首相にもわからないが、「彼らを納得させる必要がある」と首相は語った。

原題:Bruesseler Billionenpoker droht zu scheitern




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