2015年11月9日(月)7:07
Die Zeit(dpa)
ルクセンブルクのジャン・アセルボルン外相は難民流入問題を踏まえ、欧州連合が崩壊しEU加盟国間で国境検査が再開される恐れがあると警鐘を発した。「欧州連合は崩壊する恐れがある。連帯の代わりに内にも外にも扉を閉ざすことが常態になるなら、崩壊は駆け足でやって来るだろう」と外相はルクセンブルクでドイツ通信社に対して語った。
アッセルボルン外相は、1985年にルクセンブルクのシェンゲンで合意された国境検査廃止のシェンゲン協定についても危機に瀕していると見ている。「私たちに残された時間はあと数ヶ月かもしれない。」シェンゲン協定には現在26か国が加盟している。
輪番制で現在EU議長国を務めるルクセンブルクのアッセルボルン外相は、ドイツなど大半のEU加盟国は難民保護のジュネーブ協定の重要性を理解していると語った。しかしEUの「数ヶ国は経済的価値に留まらない欧州連合の価値を正しく理解しておらず、真に自らのものとしていない」。「私たちを結びつける接着剤は依然人道的な価値という文化なのだ。今の誤ったナショナリズムは本当の戦争を引き起こす恐れがある」と外相は警告した。
不安を煽るために移民問題を「意識的に悪用」している政治家や政党がある。「まさにこの点でこうした誘導に対抗しなくてはならない」。加えて「EUの諸価値が放棄されることはないという信頼を強化する必要がある」と66歳のアッセルボルン外相は主張した。
依然数十万人の人々がいわゆるバルカンルートを通って西ヨーロッパを目指している。ハンガリー政府がまずセルビア国境、のちにはクロアチア国境にも柵を建設して以降、他の国々も相応の措置を検討している。オーストリアは数週間前に国境柵の建設を議論している。他の国々でも一時的な国境検査を導入した。ドイツもこれに含まれる。目下スロヴェニアが柵の建設を検討している。ミロ・ツェラル首相は先週末、ここ数日でさらに最大10万人の難民流入が予想されると述べ、「私たちにはとても耐えられない」。必要とあらば、政府は柵を建設し、警察を強化したり軍隊を投入することも考える、と語った。
他のEU諸国も同様に限界が来ていると考えている。理由の一つには、すでにEUに入国した難民認定申請者の分担受け入れが滞っているという状況もある。分担を実行に移す際の問題は、今日月曜日に開かれるEU内相理事会で協議される。イタリアとギリシャに次ぐ第3位の受け入れ国スウェーデンも、すでに決定されたこの分担規定から恩恵を受けようと考えている。スウェーデンは相対的に最も多くの難民認定申請者を受け入れている国である。そうなれば他のEU加盟国が、すでにスウェーデンに入国した難民申請者を引き受けることになる。
アッセルボルン外相は「スウェーデンとドイツが扉を閉ざしたなら、バルカン半島でどのような事態が起きるか分からない」と述べた。EUは現在きわめて厳しい状況にある。安全なEU外部国境に依存するシェンゲン国境管理システムが危機に瀕しているのも「きわめて明白だ」。「もし私たちがこの難民流入の危機に対しEUとして解決策を見いだせず、この問題には国家として対応するしかないと考える加盟国がますます増えれば、シェンゲンの命脈は尽きる。」
シェンゲンがなくなれば、「欧州連合の最大の成果」もなくなる。これはEU市民の日常に重大な影響をもたらす。国境検査の復活は「国境移動者、経済、観光など万事に」及ぶ。EU外部国境の検査は扉を閉ざすために行うのではなく、「誰がなぜ私たちのところに来るのか、あるいは庇護を求めるのかを知るため」に行うのだ、とアッセルボルン外相は語った。
原題:Asselborn warnt vor Zerfall der EU