2012年10月13日(土)16:20
AFP
欧州連合に対する予期せぬノーベル平和賞授賞は、ドイツ国内で連合の将来に関する議論を巻き起こした。連邦議会のノルベルト・ランメルト議長(キリスト教民主同盟CDU)はヴェルト日曜版Welt am Sonntagでユーロ危機を念頭に、必須の安定化のためにEU拡大を中止するよう主張した。社会民主党(SPD)はこの発言を批判した。
ノルウェー、オスロのノーベル賞委員会は金曜日、今年度の平和賞を欧州連合に贈ることを発表した。その理由として、EUがヨーロッパ大陸における平和と民主主義の前進に寄与したとしている。
ランメルト議長はヴェルト日曜版に、目前に迫る未来に対しEUが拡大できる状況にないと考えていると述べた。「私たちは連合の強化のために数多くの緊急の課題を抱えており、必須の安定化の代わりに再び拡大という野心を優先させるべきではない。」
ランメルト議長はブルガリアとルーマニアに関する経験を踏まえて、2013年に加盟が予定されているクロアチアの性急なEU加盟に警鐘を鳴らした。クロアチアは「明らかに加盟の準備が整っていない」。旧ユーゴスラヴィアから分離独立した国々は加盟展望を持つが、EU加盟の前提条件は自ら整えなくてはならない、とランメルト議長は述べた。
ランメルト議長の発言は社会民主党から厳しい批判を浴びた。「クロアチアの加盟を疑問視する人は、将来も欧州に平和をもたらす力をEUより奪うものだ。これほどノーベル平和賞から逸脱した発言もない」とバーデン・ヴュルテンベルク州のハンス・ペーター・フリードリヒEU担当相(SPD)はシュピーゲル・オンライン版Spiegel onlineで語った。同相は「軽はずみなおしゃべり」とランメルト議長を非難した。ヨーロッパの平和にとってバルカン半島はなおも中心的な重要性を持つのだ、と同相は主張した。
一方、アンゲラ・メルケル首相(CDU)はドイツおよびヨーロッパの各国議会に対して、「欧州統合プロジェクト」のさらなる進展を呼びかけた。統一ヨーロッパdas vereinte Europaはアメリカ合衆国とは異なる姿となるだろう、とメルケル首相はツェレで開かれたCDUの州大会で述べた。「しかし一方でそれは個々の加盟国の集合体以上のものになる。」さらに債務危機を踏まえて首相は、ユーロには「通貨以上の意味がある」、すなわち二度と分断されないという決意表明なのだと付け加えた。
ヴォルフガング・ショイブレ財務相(CDU)はニュース雑誌フォーカスFocusへの寄稿で、欧州統合の始まりから55年を経てヨーロッパの国民は、欧州のしばしば血塗られた歴史上かつてないほど良い関係を築いている。しかし欧州統合プロジェクトは「まだゴールにはほど遠く」、「大きな課題」が残されている。ノーベル平和賞は統一ヨーロッパdas geeinte Europa を「真の欧州連合」wahre Europaische Unionに発展させるようにとの激励である、と語った。
一方、ドイツ憲法裁判所のハンス・ユルゲン・パピーア前所長は欧州統合の自制を呼びかけた。「やみくもに何もかも中央に集中させ、常にEUの強化ばかりを考えることがあってはならない」。多くの市民は欧州統合を「エリートのプロジェクト」としてむしろ懐疑的に見ている。「きわめて幸多い欧州統合の理念」がEUの「肥大化」で破綻してはならない。「私はヨーロッパ市民に過大な負担をかけぬよう警告する」、とパピーア前所長はヴェルト紙Weltに語った。
原題:Friedensnobelpreis loest Debatte ueber Zukunft der EU aus
Lammert spricht sich fuer Stopp der Erweiterung aus