2012年10月27日(土)ヴェルト紙
ペーア・ヒンリクス
ヴェルト紙:外務大臣、先日ノルウェーの選考委員会は欧州連合にノーベル平和賞を授与しました。このEUに対する賞賛は、ノルウェーが加盟国になるつもりがまったくないだけに意外なのですが?
アイデ外相:私はこの授賞は時宜にかなったものと思います。ヨーロッパは経済的連合体にとどまらず、繁栄と民主主義を南欧および東欧に輸出した政治的なプロジェクトでもあるからです。EUはかつて敵対した国々の間に平和をもたらしました。私にはEU以上に相応しい候補が思い浮かびません。
ヴェルト紙:それではノルウェーの国民はなぜそんな素晴らしいクラブに入ろうとしないのでしょうか?
アイデ外相:ノルウェーは加盟国にはならずとも、EUときわめて緊密に結びついた国です。私たちは欧州経済領域(EEA)協定を通じて域内市場に入っており、シェンゲン協定にも加わっています。輸出入の70パーセント以上はEU加盟国との間のものです。また我が国は経済的に弱い国々を支援するEEA資金にこれまで合計で35億ユーロを拠出しています。EUの運命は我々の運命でもあるのです。
ヴェルト紙:ノルウェーの国民も同じ見解でしょうか?
アイデ外相:私はこれまで国民にたびたび、EUは我が国のすぐお隣にあって、その運命は我々の運命でもあることを指摘せねばなりませんでした。私は欧州統合の強力な賛同者で、1994年にはEU加盟を支持しましたし、また国民投票があれば加盟に賛成票を入れるでしょう。
ヴェルト紙:なぜ外相としての最初の外国訪問がベルリンだったのでしょうか?
アイデ外相:ドイツは関係国の中でもっとも重要な通商相手国であり、もっとも緊密な政治的同盟相手だからです。加えて我が国はドイツに石油と天然ガスを供給しています。多くのドイツ人はノルウェーがロシアと同じくらいの量の天然ガスをドイツに供給していることを全然知らないかもしれませんが。
私たちは、エネルギー政策の転換でさらに大きな役割を果たすことができると考えています。なぜなら天然ガスは非再生可能エネルギーの中では群を抜いて環境に優しい燃料だからです。最近私たちは、ドイツとノルウェーの間で電気を双方向にやりとりできる、新たな電気ケーブル敷設の条約に調印したばかりです。
ヴェルト紙:あなたはヨーロッパのレベルで考え、欧州統合プロジェクトを賞賛なさっています。それでは外相としてノルウェーをEU加盟に導くおつもりでしょうか?
アイデ外相:私の党と私はもちろんそれを支持しています。しかし連立政権は任期中はこの問題に触れないことを決定しています。私は明確な加盟否定という結果になると予想されれば、国民投票実施を呼びかけることはしないでしょう。EU政策の基盤が欧州経済領域(EEA)協定となることは私たちの決定事項です。
ヴェルト紙:ノルウェーはコロンビア、スリランカ、ミャンマーの紛争で調停役を務めています。しかしすぐお隣の問題は隣人に任せています。ノルウェー人は良い人なのかもしれませんが、少し自己中心的なのではないでしょうか?
アイデ外相:EU批判派の中には加盟すればお金がかかりすぎると言う人もいるでしょう。しかしそれが真の理由ではありません。EUに正式加盟したとしても今以上に負担が増えることはほとんどないでしょう。また私たちもユーロ危機対策に関わっていますし、欧州経済領域(EEA)協定加盟国として拠出金から多額のお金を支払っているのです。
ヴェルト紙:あなたは世界のひとつの最先進国の外相です。私たちがノルウェー国民から学べることは何でしょうか?
アイデ外相:スカンジナビア諸国全体に当てはまる点ですが、いくつかあります。まず、子供を産んだ後も女性を労働市場につなぎとめておく、積極的な雇用対策です。これには手厚い育児支援制度が含まれます。そのため我が国の出生率も高いのです。これは男女同権という理由から導入された制度ですが、マクロ経済的にも良い影響を及ぼしています。
また強い労働組合も一定の役割を果たしており、賃金水準は比較的に格差がありません。また行政と国民の間には高次の信頼関係があります。私は社会民主党の政治家として、どのみちなくなるような職場を維持するのは無意味だと考えています。むしろ政治がすべきことは、次の仕事の資格取得を助けることです。私たちは、経済を支援する「大きな」国家なのです。
ヴェルト紙:いずれにせよノルウェーの人々の暮らし向きは良いですね。よく旅行に行き、ベルリンが一番お気に入りのようです。なぜノルウェー人はそんなにベルリンが好きなのでしょうか?
アイデ外相:とにかくすばらしい都市だからです。私たちの生活スタイルに合っており、ここにはたくさんの芸術家が暮らしています。町は緑にあふれ、ゆたかな歴史と文化があり、住みやすいところです。私は個人的にベルリンが最高だと思います。
原題:Was Deutschland von den Norwegern lernen kann