2006年9月21日(木)
ブリュッセル(AP)
10ヶ国のEU加盟から2年後、EUには一種の拡大疲れが広がっている。もはや欧州委員会もこれを否定しない。しかしオリ・レーン拡大担当委員は来週火曜日、ほぼ確実に2ヶ国の来年1月加盟を認める意向である。ルーマニアとブルガリアである。
ブルガリアは一部の西欧市民には休暇旅行の滞在地として知られているが、ルーマニアには悪いイメージがつきまとう。「チャウシェスク、孤児院、汚職腐敗」とルーマニアのオヴィディウ・ガントEU監視官は自国に対する決まり文句を挙げる。しかし少数民族であるドイツ系のガント監視官はこのイメージをきわめて一面的と退ける。
1年前に監視官として欧州議会に着任して以来、ガント監視官はできるだけ多くの議員にルーマニアの別の面を示そうと努めてきた。たとえば、年間5パーセントにおよぶ急激な経済成長、国民の教育水準の高さ、もちろん文化や国土の美しさもこれに含まれる。ガント監視官は欧州委員会も盟友と考えている。欧州委員会がルーマニア政府に対して改革の着実な進展を認めてから、多くの欧州議員が私のふるさとに対する見解をあらためた。「私は欧州委員会の報告書をいつもきわめて正確で客観的なものと評価している。報告書がまだ完全に否定的であった時も含めて」とガント監視官は強調した。
少なくとも今年5月以降報告書はもはや否定的な内容となっていない。ルーマニア政府は「司法改革で重要な施策」を行い、「相当数の汚職の糾明」に努めたと欧州委員会は5月に報告している。これによりルーマニアは初めて加盟準備で隣国ブルガリアに先行した。一方のブルガリアは報告書で、汚職撲滅が成果を挙げていることを証明するよう求められた。
しかし欧州委員会は依然両国について問題点を指摘している。留置場での虐待、孤児院や障害者施設の劣悪な環境、ルーマニアでもブルガリアでも少なくとも人口の5パーセントを占めるロマに対する差別などである。また、両国政府が2007年1月までにEU農業補助金を分配する行政機構を整備できるか、現在に至るまで不透明である。
そのため多くの監視官は、欧州委員会が3ヶ月後の加盟を勧奨する際に厳しい注意や場合によっては警告も付すものと考えている。ドイツ選出のヨルゴ・ハチマルカキス欧州議員は注意や警告が必須であると考える。「それがなければどんな内容であれ信頼性に欠け、EUに大きな危機をもたらすことになろう」と自由民主党(FDP)所属の同議員は述べた。ハチマルカキス議員は欧州議会EU‐ブルガリア混成委員会の一員である。ブルガリアが加盟条件を満たさない場合は、豊かな地域と貧しい地域の生活水準の均衡化を図る構造調整基金を当分の間支給しない、と同議員は警告した。
ガント監視官もルーマニア、ブルガリア両国に警告が送られると予測しているが、それはEU補助金分配の監督庁が成立しないことが判明する12月になるものと考えている。制裁警告は効果があるとガント監視官は考えている。「補助金が支給されなければ、国内の雰囲気はきわめて悪くなるだろう」。こうした見通しはルーマニア政府の加盟準備に拍車をかけることになろう、と監視官は述べた。
ガント監視官は加盟期日の延期は懸念していない。自由民主党のハチマルカキス欧州議員も、あらゆる批判にも関わらず、延期には絶対反対である。いずれにせよ遅くとも2008年にはブルガリアもルーマニアもEU加盟国になるのであり、これは条約で保証されているからである。加盟を1年延期したところで、何ら得るものがないばかりか、その反対だ、とハチマルカキス議員は主張する。「加盟が実現しなければ、ブルガリア国内の民族主義者を勢いづかせるだけである」。加えてブルガリアの早期加盟はほかならぬドイツ経済の利益に叶う、と議員は語る。ドイツは現時点でもブルガリアの最も重要な貿易相手国の一つである。
それでは旧EU市民の拡大疲れはどうなるのか?「これはいずれにせよ存在する。私たちは来年もこの議論を行なうことだろう」。今「最終的な決断を下すことが加盟候補国に対するフェアな態度なのだ」。さらに、「両国がEUの一員となり、それによって同じ法システムに所属すれば、私たちは汚職撲滅などでさらに効果的に援助することができる」、と欧州議会EU‐ブルガリア混成委員会に所属する、キリスト教民主同盟(CDU)のディーターレーブレヒト・コッホ欧州議員は主張している。
原題:Bulgarien und Rumaenien duerfen auf EU-Beitritt im Januar hoffen