2004年4月21日(水)15:46

欧州委員会筋:「きわめて危険な賭け」

ブリュッセル(AP)

トニー・ブレア首相がEUに懐疑的なイギリス国民に国民投票で欧州憲法を問うと発表したことは、さもなくともブリュッセルの欧州委員会が抱えていた懸念を一層募らせる結果になった。欧州委員会は公式には、今回の決定はイギリス政府の主権に属すると述べたものの、EU筋からは水曜日に「これはリスクの高い賭けである」との声が聞かれた。

というのもイギリス国民が憲法を否決すれば、欧州憲法の計画全体が御破算になる恐れがあるからである。なぜなら欧州憲法条約はすべての加盟国の批准を必要とするからである。今のところドイツを含めた大半の国は議会の決定で批准を行う意向である。デンマーク、アイルランド、オランダ、ルクセンブルク、スペインに限っては、すでに国民投票の実施を発表している。しかしブレア首相の発表を受けて、ドイツ政府ばかりかフランス政府にも国民投票を求める圧力が高まっている。

これまで国民投票で否決した例はデンマークとアイルランドがある。デンマークはマーストリヒト条約を拒否し、アイルランドはニース条約を否決した。いずれの場合も再度国民投票を実施し、二度目の投票で可決に漕ぎつけた。しかし今回のイギリスの場合はそれほど簡単に行かないであろう。低俗な大衆紙だけでも反EU機運を煽るに充分であるからだ。

欧州憲法が批准の際にあらためて危機に陥るというリスクは、憲法草案を作成し、昨年の夏に提案したEU将来像会議もすでに認識していた。同会議のヴァレリー・ジスカールデスタン議長は、欧州憲法を批准する国だけでEUを創設し直すことすら提案していた。しかしこの提案は、ドイツのヨシュカ・フィッシャー外相を含む会議のメンバーから拒否された。

しかし憲法草案には補足として議定書が付されている。これによれば、調印後2年を経て加盟国の5分の4、すなわち20ヶ国が憲法を批准し、1ヶ国または数ヶ国で批准の問題が生じた場合は、EU首脳会議がこの問題を取り扱うと規定されている。EU筋の伝えるところでは、「これは欧州憲法があっさりと葬り去られるのを防ぐ仕組みである」という。しかしこの規定が具体的に何を指しているのかは不明である。

EUが加盟国を排除する可能性は、きわめて厳しい条件のもとでしか認められていない。たとえば、その国が欧州連合の基本価値に真っ向から違反していることを証明する必要がある。もちろんイギリス国民の欧州憲法否決はそれには含まれない。

ブレア首相は自らの方針転換でまっしぐらに突き進む。EU憲法の将来ばかりではない。「いよいよ、この国、イギリスが、欧州の意思決定の中央で中心となる意思があるのか否かを最終的に決断する時が来た。EUの指導的な一員である同盟国となるのか、それとも脇役になるのかという我々の運命を決める時である」と首相は火曜日、決定を行った後に語った。

EU内ではイギリスはこれまで常に特殊な役割を演じてきた。ユーロ導入は望まない。旅券審査なしの旅行を可能にするシェンゲン協定にも加わらない。その上、数年前からは、比較的農民が少ないことを理由に、いわゆる英国割引と呼ばれるEU拠出金の割引も認められている。

それゆえEU外交筋はブレア首相の向こう見ずな路線にチャンスも見ている。「もし成功すれば量子飛躍となり、相当な衝撃を及ぼすであろう」と欧州委員会ではささやかれている。なぜなら、もし国民投票で批准に成功すれば、これまで最も欧州統合に懐疑的であった国がEUの側につくことになるからだ。そうなればこの結果は、EUを不信の眼で眺めているスウェーデンやデンマークにも同じ影響を及ぼすであろう。

しかしこれが不首尾に終わり、欧州憲法が頓挫すれば、再び中核ヨーロッパ(=中核EU。訳注)の考えが提唱されることになろう。そうなれば、ドイツやフランス、ベネルクス三国のような統合に積極的な国々は一層結びつきを強め、二つの速度のEUという考えを推進するであろう。実際、二つの速度はユーロの導入で現実のものとなっている。

だが国民投票の前にまずEU各国首脳は憲法草案に合意する必要がある。6月17日、18日にブリュッセルで開かれる次期首脳会議で事態の打開をはかることが計画されている。EU拡大の進展や欧州連合の世界における役割の増大に伴い、新たな条約が必要とされることは、少なくとももはやどの加盟国の政府も否定していないのである。

原題:≪Spiel mit hohem Risiko≫




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