2005年12月27日(火)08:52
ブリュッセル(AP)
危機の年2005年は欧州連合にとって何とか平穏に終わった。とりわけ中期予算問題の解決で安堵したのがオーストリアである。というのもオーストリア政府は2006年1月1日に6ヶ月の任期でEU議長国を務めるからである。もはやヴォルフガング・シュッセル首相は、巨額の予算の配分をめぐる激しい交渉を調停する必要はない。凍結されたままのEU憲法の再生に全力を注ぐことができるのである。
しかしフランスとオランダの国民投票で否決されたEU憲法条約をいかに救うかについては、オーストリア政府も途方に暮れているように見える。ウルズラ・プラスニク外相は「熟慮の段階に一層のダイナミズムを与える」と述べたが、「過大な期待を抱かないよう忠告する」とも付け加えた。明確なのは憲法が「外科療法や美容」だけでは救えないということだ、と外相は語っている。
この「熟慮の段階」は今年6月に開かれたEU首脳会議で、フランスとオランダの国民投票によるEU憲法の否決を受けて決定された。これにより憲法条約の批准は少なくとも1年延期された。今後これをどう進めるかについてはオーストリアが議長を務める2006年6月の首脳会議で決定されることになる。しかしこれまでのところ、この「熟慮」は何ら目立った動きをもたらしていない。
「私たちは作戦タイムを取っているとも言えるかもしれない。だが現在の状況は単に休んでいるだけで、考えてはいない」とドイツ出身のフェアホイゲン欧州委員は先日語った。ブリュッセルのEU本部からは、とりわけフランスとオランダが今のところ憲法論議の再開に特段の意義を認めていないという声が伝わってくる。
両国では2007年に選挙が控えている。フランスは大統領選挙、オランダでは議会選挙である。政治家にとってEU憲法に関する議論は選挙戦ではむしろ不都合なテーマとなろう。明確なのは憲法条約が加盟全25ヶ国で批准されない限り、発効しないということである。また選挙が終わった後でないとフランスとオランダでの仕切り直しができないこともはっきりしている。
したがって議長国オーストリアの活動の余地も限られている。シュッセル首相にできるのは、批准手続きをせめて公式に開始するよう働きかけることぐらいであろう。これまでEU憲法はドイツ、オーストリアの両国議会を含め、25ヶ国中14ヶ国で批准された。他の国々もこれに続けば、イギリスやデンマークのような日和見国に対し、延期された国民投票の再開に向け圧力となろう。
憲法問題を除けばEUの大きな課題はあまり残っていない。議長国オーストリアの課題となるのは、せいぜいのところフランスの求める新拡大ラウンドに関する議論ぐらいであろう。シュッセル首相にとって厄介なのは、首相がEU未加盟のバルカン諸国のEU接近を議長任期中の重要課題の一つとして位置づけていることである。
しかし新規加盟に対する他のEU加盟国の受け入れ態勢は制約付きのものとなるだろう。来年5月に欧州委員会はブルガリアとルーマニアの加盟能力に関する最終報告を発表する意向である。この報告で肯定的な評価が下されれば−これには今のところ疑問符が付くが−、両国は2007年1月1日に加盟を果たすことになろう。さもなければ加盟は1年先送りされる。
さらにシュッセル議長の6ヶ月の任期中の課題にはEUの日常業務の運営がある。中でもEUのサービス業と労働時間の基準をめぐる綱引きが主要問題となろう。2013年までの中期予算計画という大きな障害は、シュッセル議長の前任者のトニー・ブレア首相が片付けたばかりである。
ブレア議長は12月のEU首脳会議で予算問題を解決したことにより、議長としてかろうじて面目を保った。予算問題の合意がなければ、イギリスはこれまでで最低の議長国となったであろう。イギリスほどあからさまに自国の利益をEUレベルで押し通そうとした議長国は珍しい。
ブレア首相が成功を収めたのは自らの関心のある問題に留まった。たとえばトルコとの加盟交渉を期日どおり10月3日に開始することに成功した。またテロ撲滅問題では電話情報の保存管理など、新たな対策を講じることができた。しかしEU憲法に関してはこの6ヶ月ブリュッセルのEU本部からは何の声も聞こえてこなかった。
原題:≪Warnung vor ueberzogenen Erwartungen≫