2000年12月11日(月) 17:43
ニース(ロイター)
EUの各国首脳はニースの改革決定に関して加盟候補国からは賛同を得る一方、欧州委員会からは批判を受けた。ポーランドのイェジ・ブゼク首相は月曜日ラジオ放送で、きわめて良い結果が得られたと述べた。これに対しロマーノ・プロ−ディ欧州委員長は、さらに踏み込んだ改革措置が決定されなかったことに対し遺憾の意を表明した。月曜日の早朝、15ヶ国の首脳は小国と大国間の権力闘争を経て、欧州連合の拡大に道を拓く機構改革条約の合意にたどり着いた。フランスのジャック・シラク大統領とドイツのゲルハルト・シュレーダー首相は会議の結果に満足した表情を見せた。
数日間に及ぶ厳しい協議を経て合意に至ったニースの改革条約は、最後まで揉めた加盟国の票配分に関する規定も含んでいる。それによればドイツは他の大国以上の票を獲得するには至らなかった。小国グループが大国グループに多数決で勝ることのないよう条項が設けられた。多数決決議の拡大では、税制や社会保障政策のような重要な問題に関しては拒否権削除の合意が得られなかった。新たな改革ラウンドの開始と密接な協力を望む国々の先行統合は承認された。将来の欧州委員会の規模については将来あらためて決定されることになった。
シラク大統領は、ニースの会合は「偉大な首脳会議」として欧州の歴史に刻まれることになろうと述べた。イギリスのトニー・ブレア首相は、首脳会議の結果は満足のいくもので、EU拡大に道が拓けたと述べた。シュレーダー首相は、EUはこれで「新たな加盟国を受け入れる準備ができた」。すべてのEU加盟国の全会一致という前提のもとで首脳会議は「決めなくてはならないことをなんとか果たした」、と語った。
シュレーダー首相はドイツの利害に関連して、ドイツは表立って表すことなくその比重を増した。ドイツ政府はたとえば多数決原理の拡大などいくつかの分野でさらなる進展を望んではいたが、欧州はひとつにまとまらねばならないという高次の戦略的目標のために譲歩した、と語った。
ポーランド、ハンガリー、エストニアおよびスロヴェニアの加盟候補国の代表はニース首脳会議の決定をEU拡大のレールを敷くものとして評価した。ポーランドのブゼク首相はシュレーダー首相に対してポーランドの利害のために尽力してくれたと謝意を述べた。EUは現在12の国々と加盟協議を行っている。新規加盟は2003年以降可能となる予定である。
これに対し、プロ−ディ委員長のスポークスマン、ジョナサン・フォール Jonathan Faullは、税制分野における将来の多数決決定が取り決められなかったことは「相当なハンディキャップ」であると述べた。前欧州委員カレル・ファン・ミールトは、この首脳会議によってもEUは「まったく拡大に向けた準備が整わない」だろうと批判した。
木曜日に始まった、きわめて厳しく長い協議を経てようやく合意に至った分野もある。首脳会議は日曜日の晩、数ヶ国の小国が修正を要求した際に、決裂の瀬戸際まで追い詰められた。最後まで一連の改革案に抵抗を続けたのはベルギー1ヶ国であった。小国の発言権がなくなるという同国の懸念は譲歩案によって解消された。
ドイツ、フランス、イタリアおよびイギリスは閣僚理事会において現在の10票からあらたにそれぞれ29票の持ち票が配分された。この案に対しベルギーは、閣僚理事会の特定多数決決定の際、否決に必要な最低票数を低く設定することなどで合意した。これにより小国の発言権は強められることになる。小さな国々が大きな国々に多数決で勝ることのないよう、閣僚理事会の決定はEU人口の62パーセントを代表せねばならないとする条項が定められた。これによりドイツは他の2大国を伴えば決定を阻止できる唯一の国となった。
ドイツの要求どおり、難民移民政策分野ではあらかじめ政治的コンセプトが全会一致で決定された場合に限り多数決決定が導入されることになった。通商政策においては数多くの例外を設けた上で多数決決定が認められた。この例外規定によってフランスの映画・文化産業は実効的な保護がはかられることになる。フランスはこれまでアメリカの映画産業との競争を理由に拒否権に固執する姿勢を示していた。
新たな政府協議は2004年までにEU内の権限確定に関する提案を取りまとめることになった。しかるのち、ニースで採択されたEU基本権憲章の将来の法的地位が決定される予定である。新たな政府協議はEU憲法条約への扉を開くものとなる可能性がある。
欧州委員会の委員数の制限に関しては、EUが27ヶ国に拡大した後あらためて取り決められることになった。その後は輪番制が導入されることになる。また首脳会議では、欧州委員長の地位も強化されることが決まった。委員長の選出はこれまでの全会一致から多数決に改められ、基本方針や組織に関する権限を持つことになる。
原題:Ergebniss von Nizza trifft auf Kritik und Zustimmung