2007年1月17日(水)12:19
ストラスブール(ドイツ通信社dpa)
ドイツのアンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟)は、EU憲法の批准に向けて6月末までに具体的な提案を行なう意向である。首相は水曜日ストラスブールの欧州議会で、EUは2005年のフランスとオランダの国民投票で否決された憲法の発効なしには今後の拡大も不可能だとあらためて強調した。
メルケル首相は、憲法草案で定められたEU外相職も緊急の必要性があると主張した。「私たちには欧州連合の規模と懸案の課題に対応できる新たな規則が必要だ」。メルケル首相は6月末までEU議長職を務める。
私はドイツのEU議長任期の終わりまでに今後の批准プロセスの「ロードマップ」が採択されるよう努力するつもりだ、とメルケル首相は述べた。EU憲法は加盟27ヶ国中18ヶ国で批准が終わっている。首相は「このプロセスを2009年春の次期欧州議会選挙までに良い結果に導くことはEUの利益に叶う。挫折すれば歴史的怠慢になる」と訴えた。
「私たちは、欧州連合が現行の規則では拡大もできず、必要な決定も行なえないことを知っている」。「私たちはこの状態を克服しなければならない。それゆえ私たちは欧州連合と加盟国の権限に関する明確な規定が必要なのだ」とメルケル首相は述べた。首相は「欧州レベルで最も効率的に実行できることのみに集中する」EUを求めた。逆にEUは「欧州レベルでの規定がむしろ妨げになるような政治分野については、意識的に加盟国や地域に委ねる必要がある」と主張した。
785名の議員を数える欧州議会の主要会派のほとんどは広報官を通して、批准プロセス再生の道を見出すと表明したメルケル首相の決意を歓迎する声明を出した。しかし緑の党のダーニエル・コーンベンディート代表は、EU各国政府が政府協議で打開の道を探るという考えに警告を発した。「私たちが必要なのは公の討論であり、合意なのだ。憲法は政府協議の密室で再生されてはならない。」
欧州議会社会民主党のマルティーン・シュルツ(ドイツ社会民主党)代表は、「憲法の中核部分」は「EUの多数支持を得られる」と述べた。しかしメルケル首相に対して、ドイツの大連立政権内で合意された脱原子力エネルギー政策を変更しないよう釘を刺した。EU議長の立場を利用して「内政問題で転換を図り、キリスト教民主同盟(CDU)党首として望んでいる政策を実行に移す」などということがあってはならない、とシュルツ代表は警告した。
「西バルカンの安定は私たちの共通の関心事である」とメルケル首相は述べた。「西バルカン諸国にEU加盟展望を与えなければ、この安定は得られない」。しかしEUは隣国関係で「これまで以上の政治的構築意思を示す」必要がある。ドイツは議長国として黒海沿岸地域や中央アジアに対してEUとの密接な、しかし加盟には至らない結びつきを図る「隣国政策」を提案するつもりだ。「多くの国々の加盟は常に実現できるわけではない。」
メルケル首相は寛容をEU政治の基本的ライトモチーフ(指導動機)として繰り返し称賛した。「EUは非寛容に対しては決してほんの少しの理解も示してはならない」。しかし「現在寛容を発揮できないでいる世界の国民や地域に対して、高慢になること」があってはならないとも戒めた。メルケル首相はEUを市民に近づけるためには、EUの官僚主義の廃止と雇用創出が重要な施策になると述べた。
欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長は、EUは3月にベルリンで行なわれる創立50周年記念式典で、「欧州連合の価値や目標をあらためて確認する」声明を発表するよう求めた。委員長は、これには連帯や安全だけでなく持続可能なエネルギー政策も含まれる。「市民の賛同に基づくEUならば土台は安定する」、と語った。
原題:Merkel: Keine neue EU-Erweiterung ohne Verfassung