2000年7月1日(土)

ブレアはEU内の指導的役割を要求

英首相が独仏のイニシアチブに応える

ベルリナー・モルゲンポスト紙

AFP/ドイツ通信社(テュービンゲン/ ベルリン)

 欧州連合の改革をめぐる論議において、イギリスのトニー・ブレア首相は英国が指導的役割を担うことを求めた。「私は、ヨーロッパの全面的かつ指導的パートナーとなるのがイギリスにとって重要であることを疑わない」とブレア首相は昨日テュービンゲン大学の招待講演で述べた。ブレア首相は、欧州連合内の指導的国々による「先駆グループ」の形成を唱えたシラク・フランス大統領の火曜日の連邦議会における演説を「興味深い」と評した。

 ヨーロッパは「我々に対立する謀議などではない。むしろ我々にとって好機なのだ」とブレア首相は強調した。すでに同じ内容のことをドイツ連邦首相ゲルハルト・シュレーダーとの会談を終えた木曜日の晩にベルリンで述べている。グリーニケ城の晩餐会におけるシュレーダー首相とブレア首相の会話は、ドイツ政府のスポークスマンによれば「親密で友好的」なものだったという。この席では独英関係の状況や国際的な問題、とりわけEUの拡大が話題の中心となった、両国の首相は拡大後の欧州連合における協力が不可欠との認識で一致した、という。

 昨日テュービンゲンにおいてブレア首相は、イギリス国民は自らがヨーロッパの政治問題にともに影響を及ぼし、ともに決定を下すことができることを、またすでにこれを行ってきたことをそろそろ認識すべき時に来ている、と述べた。シュレーダー首相との会談においてもこのことを協調したという。ブレア首相は、秋に基調演説を行い、ヨーロッパの将来に関するイギリスの見解を明らかにするつもりである、と発表した。

 すでに木曜日イギリス政府のスポークスマンは、シラク大統領の提唱する「先駆グループ」が「二つのリーグのヨーロッパ」を作ることになるのであればイギリスは承伏できない、とのブレア首相の言葉を伝えている。イギリスのロビン・クック外相はシラク大統領の提案を「きわめて有害」と退けた。

 テュービンゲン大学においてブレア首相は「世界政治と世界倫理」という講演を行い、このテーマをめぐる一連の催しの幕を開けた。グローバル化の課題に対する首相の説明は大きな関心を呼んだ。(6月の初めにこのテーマでベルリン会議「21世紀の現代政治」が開かれたが、ブレア首相は息子の誕生を理由に欠席していた。)900席の祝典ホールのほかに二つの講義室でもスクリーンで講演が中継され、満席の聴衆は首相の見解に耳を傾けた。聴衆の中には週刊紙『ツァイト』の編集人マリオン・デーンホフ伯爵夫人、バーデン・ヴュルテンベルク州の大臣ヴァルター・デーリンク(自由民主党)およびクラウス・フォン・トロータ(キリスト教民主同盟)の姿も見られた。

 母校の前でブレア首相はおよそ200名の観衆に手を振った。アロハシャツを着た数名のファンは白いズボンに首相のサインを求めた。

 47歳の労働党党首は、世界規模で急速に進む経済、学問および社会における変革に対する回答を模索した。我々は主体となってグローバル化を進めるべきか、それともグローバル化に操られるがままになるのか?

 ブレア首相の信念は、積極的に関与すべき、である。「我々の時代が不安の時代と呼ばれるのも驚くに及ばない。」なぜならどんな国も単独で環境破壊、組織犯罪および疾病のような世界規模の問題を解決することはできないからである。国々が協力する上で基盤となる価値が見出されなくてはならない、と演説した。

 ブレア首相は、機会の均等、人間の尊厳および自由を提唱する。機会均等の権利には教育を受ける権利も含まれる、かつて国々は軍備拡張競争に明け暮れたが、現代は知識の競争である、教育は貧困を撲滅する手段である、と主張した。

 ブレア首相は権利には必ず義務が伴うことも明言した。たとえば失業者は提供された仕事を拒んではならない、と述べた。この発言に激昂した若い女性は「すべての者に強制労働か」とブレア首相に野次を浴びせた。

 この女性は妨害グループの一人で、あるいはグローバル化に反対する勢力かイギリスのコソボ介入を批判するグループの可能性もある。学生たちは、ブレア首相は「戦争好き」とTシャツに記してブレア首相を罵った。

 社会民主主義者である英首相は動揺を見せず、抗議する若者に対し、講演後の質疑応答の時間に質問するよう呼びかけ、マナーの悪さをたしなめた。

 招待者である、カトリックの神学者で世界倫理財団の理事長のハンス・キュンクの質問に答え、ブレア首相は民族殺戮を引き合いに出し、「もし世界が袖手傍観していたならば、罪を免れることはできなかったであろう」と述べてコソボへの対応を弁護した。

原題:Blair fordert Fuehrungsrolle in der EU
Der britische Premier reagiert auf deutsch-franzoesische Initiative
Berliner Morgenpost