2006年6月16日(金)15:59
ブリュッセル(AP)
欧州憲法をめぐる危機を克服すべく、EU各国首脳は新たな猶予期間を設けた。EU首脳会議は金曜日ブリュッセルで、2008年末までに憲法条約の将来を明確に決定すると決定し、閉幕した。憲法がフランスとオランダの批准否決にもかかわらず、いつの日か発効する可能性は依然不透明である。
中期的にはフランスとオランダがもはや大きな問題にならないことが、2日間の首脳会議で明らかになった。スウェーデンのイェーラン・パーション首相は「フランスでもオランダでも仕切り直しが行われるものと確信している」と述べた。EUの戦略家にとってはむしろいくつかの新規加盟国の態度の方が懸念材料となった。
出席者筋によれば、首脳会議の一番の厄介者はチェコのヴァーツラフ・クラウス大統領であったという。大統領は首脳会議の閉幕宣言を承認したにもかかわらず、EU憲法は「死んだ」とあからさまに宣告した。大統領は新聞記者を前に、憲法はもはや「テーマとならない」。欧州憲法の批准はチェコでは「議事日程に上っていない」。私は恥じることなくきっぱりと言う。「誰か一人は明確な態度を取らねばならないのだ」、と語った。
このような発言は旧加盟国の間で憤激を引き起こした模様である。加盟国の首脳は誰一人口に出して言うことはなかったものの、不協和音は明らかになった。これはチェコ、ポーランド、ハンガリー、スロヴェニアがリトアニアと一緒に、ユーロ導入の基準に関する議論を求めたときに一層高まった。
これらの国々はこの要求で、リトアニアが高いインフレ率を理由に当面ユーロ導入を見送られたことに反発したのである。欧州委員会のジョゼ・マニュエル・バローゾ委員長はこの要求を「有益なものではない」と切り捨てた。クラウス大統領はこれに理解を示さず、「私はバローゾ委員長の批判は本気ではないと思う」と述べた。「それゆえ、委員長が何も言わなかったかのように私たちが振舞うことを提案する。」
他のテーマに関してもチェコのクラウス大統領はきわめて特殊な意見を述べた。たとえば、アフリカからの不法移民の流入増加はEU自らが招いた問題であるという。大統領は、アフリカの人々の期待を呼び覚ましたのは欧州の繁栄システムであり、「これが移民を引き寄せ、欧州市民の労働意欲を削いでいるのだ」と主張した。
EU憲法はこれまで加盟全25ヶ国中ドイツを含む15ヶ国で批准を終えている。フィンランドは7月から12月のEU議長国任期中に批准を行なう意向である。そうなると残りは8ヶ国となる。フランスとオランダは2007年春のそれぞれ大統領選挙、議会選挙の後に新たな状況が生まれるものと予想される。
チェコと並んでイギリスとポーランドも問題児と見なされている。イギリスのトニー・ブレア首相はフランスとオランダの批准否決直後に国民投票の計画を取り下げた。ポーランドではチェコと同様、今のところ憲法批准の計画がない。この袋小路からの出口を見出す役割はまずはドイツのアンゲラ・メルケル首相の肩にかかっている。
2007年上半期に議長国ドイツは報告書を発表する。この報告書では「憲法条約に関する協議の状況を評価し、今後の展開の可能性を示す」と首脳会議の最終文書では記されている。メルケル首相はEU議長職を踏まえて、「私たちはこの時期を楽しみにしている。仕事量の多い時期になることは承知している」と述べた。
EUはこれと並行して、欧州の人々に具体的な成果をもたらすことに一層の重点を置く意向である。モットーは「プロジェクトと成果のEU」である。メルケル首相は、EUは常に人々のための政策を行なってきた。しかし現在欧州市民の間ではEUに対する疑念が膨らんでいる。とりわけEU憲法批准の国民投票が予定されている国々で、これに対する対策を講じる必要がある、と語った。
原題:≪Einer muss ja eine klare Haltung einnehmen≫