2007年6月21日(木)22:11
ブリュッセル(ドイツ通信社dpa)
ドイツのアンゲラ・メルケル首相はEU首脳会議で、ポーランドとイギリスの強い抵抗に遭いながらも、長らく宿題となっていた機構改革に向け、成果を得た。
木曜日ブリュッセルでの協議の開始後、相当に内容を縮小したEU条約に対し、長らく抵抗していたオランダの懸念が大幅に払拭された、との情報が代表団筋から伝えられた。しかし、ポーランドのレフ・カチンスキ大統領とイギリスのトニー・ブレア首相は、阻止の姿勢を一段と強化した。ポーランドは欧州連合内の発言権拡大を求め、ドイツの戦争責任をも持ち出した。これはEUの歴史上類のない出来事である。
混み入った条約交渉を控え、EU各国首脳は2008年1月1日のマルタとキプロスのユーロ圏加盟を承認した。これによりユーロ圏は15ヶ国、3億2000万人に拡大することになる。
レフ・カチンスキ大統領の双子の兄、ヤロスワフ・カチンスキ首相は、第二次大戦がなければポーランドの人口は3800万人ではなく6600万人になっていたと主張した。「私たちは奪われたものを求めているだけだ。」首脳会議にはレフ・カチンスキ大統領がポーランドを代表して出席した。大統領は兄の首相と比べて比較的柔軟と見られている。しかしポーランドは基本的に、EU閣僚理事会の票決におけるドイツのような大国の影響力を新たな条約で抑えようと望んでいる。
メルケル首相は首脳会議の開幕にあたり、「私たちを見守っているのはヨーロッパの人々ばかりではないと考える。私たちは雇用、繁栄、安全などの大きな課題に対処できるよう、全力を尽くして合意を図らねばならない」と訴えた。首相は晩餐の席で、意見の異なるグループからあらためておよその意向を聞く考えである。
首脳会議から1週間も経たない6月27日に退任するブレア首相は、合意の意思を示したものの、具体的議論では譲らない姿勢を見せた。「もちろん私たちはEUが効率的に機能することを望んでいる。しかし私たちの要求は完全に認められねばならない」。また、後継者のゴードン・ブラウン次期首相が受け入れられないことは何一つ承認するつもりはない、とブレア首相は述べた。
イギリスはとりわけ、欧州基本権憲章に法的拘束力を持たせることや、EUの国際的組織への加盟に道を開くEUの法人化などに強く反対している。
ブレア首相は内務・司法政策の自国への適応除外、ならびにEU「外相」の権限縮小を求めている。ブレア首相の広報官は、「これはつまみ食いして良いメニューではない」。「EUの代表は閣僚理事会に対する責任を負っており、個々の加盟国が独自の外交政策を行なう権限を持つことを明らかにする必要がある」と述べた。
今年末までに政府間協議で条約の成文化を図るという議長国ドイツの提案は、とりわけ社会政策、内務・司法政策の適応除外、ならびにいまだ名称の決まっていない「外相」の権限など、イギリスの希望を汲んだ一連の規定を盛り込んでいる。
イギリスの姿勢に対しては、スペインなどから厳しい批判が浴びせられた。ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテーロ首相は、「私たちの考えではイギリスの姿勢が最大の障害である」と述べた。スペインは国民投票でEU憲法を批准している。
オーストリアのアルフレート・グーゼンバウアー首相(社会民主党)はポーランドとイギリスに対し、過度の要求を慎むよう厳しく警告した。EU憲法をすでに批准したオーストリアや他の17ヶ国にとっては、「条約のどのような変更もすでに妥協であり、批准の問題を抱えている国すべてに対する友好的態度」なのであると語った。
メルケル首相の方針に対しては、欧州議会の保守系、キリスト教系、自由系政党の党首からも支持が寄せられた。ルクセンブルクのジャンクロード・ユンケル首相など、憲法擁護論者は、合意の可能性を五分五分と見ている。
ドイツ通信社マルティーン・ロマンチュク記者
原題:Blair und Kaczynski blockieren EU-Gipfel