2000年6月27日(火)18:12

シラク大統領はEUの先駆グループによる緊密な協力を主張

ベルリン(ロイター)

 フランスのジャック・シラク大統領は、統合への強い熱意を持つEU諸国による「先駆グループ」の形成に賛意を示した。より早くまた一層緊密に協力を進めようと望むこれらの国々を他の国が阻むことがあってはならない、とシラク大統領は火曜日ベルリンの連邦議会で述べた。「これは土曜日に欧州連合(EU)議長国に就任するフランスの議長任期の目標である。12月のEU改革会議の終了を待って、その後のEUの発展が討議されることになる」と大統領は語った。イギリスのトニー・ブレア首相のスポークスマンは、イギリスは「二つの速度のヨーロッパ」には反対である、しかしヨーロッパから脱退することはない、と強調した。

 シラク大統領は、かつての帝国議事堂を改築した連邦議会で最初に演説を行った外国の元首となった。「強化した協力」(先行統合)の要求ではフランスとドイツは同一歩調をとっている。ドイツとフランスは、新規加盟国受け入れに不可欠の機構改革を決定する12月のEU首脳会議で、先行統合案を可決させる意向である。シラク大統領は、政府間会議の成功にEUのその後のすべての発展がかかっている、と述べた。ドイツとフランスは改革に関し共同で対処する意向であるが、すべての点で合意に達しているわけではない。

 「先駆グループ」には新たな条約は必要なく、新たな機構組織を検討する必要もない、事務局がひとつあれば十分である、このグループは他のEU諸国に対し開かれている、しかしこのパイオニアグループは必要とあればEU条約の枠外で協力することも辞さない、これらの国は2001年には経済政策の協調をはかり、一層緊密な共同の安全保障・防衛政策を追求し、効率的な犯罪撲滅をはかることになる、とシラク大統領は述べた。

 シラク大統領の言葉によれば、政府間会議の終了後EUの将来の発展が討議される、具体的には、さまざまの政治的レベルにおける権限の分担・画定、欧州基本権憲章、欧州連合の行政と立法の権力分立、ならびに最終的な欧州連合の境界の画定である。同大統領は、これには「数年」かかるだろうと述べ、また、あらためて近年中の欧州憲法の作成を主張した。

 ドイツ連邦政府は先週EUの将来の発展を協議する政府間会議の開催を要求した。5月にはヨシュカ・フィッシャー外相(緑の党)が欧州連邦構想を発表している。

 フィッシャー外相は、シラク大統領の「非常に重要な今後の指針となる演説」に自らの構想との「多くの共通点を見つけた」と述べ、耳と目のある者なら誰でも「フランス大統領が私の考えの及ばなかったところまで構想を進めている」のが分かるだろう、と指摘した。キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU/CSU)の議員団長フリートリヒ・メルツ(CDU)はテレビ局「フェニックス」のインタビューで、シラク大統領の提案は既存の機構組織内で「中核ヨーロッパ」を唱えたコール政権の構想に合致している、と述べた。

 シラク大統領の演説の後、イギリスの野党は、首相は除け者にされてしまった、とブレア首相を批判した。ブレア首相のスポークスマンは、イギリス政府はフランス大統領が先行統合をはかる国々を小さな中核とする二つの速度のヨーロッパを論じたとは考えてはいない、という声明を出した。ロビン・クック外相は、労働党政府の目標はイギリスがフランスやドイツ、イタリアと同じ力を持つヨーロッパの指導的地位を保持することである、と述べた。

 ブレア首相は木曜日にベルリンでシュレーダー首相とヨーロッパの将来について協議する予定である。先週のポルトガルのEU首脳会議ではシラク大統領とシュレーダー首相が二つの速度のヨーロッパを巡ってブレア首相と真っ向から衝突した。

 シラク大統領はまた欧州の成長協定も提案した。ドイツ経営者連盟(BDI)における演説で、「ヨーロッパの利益と雇用拡大のための成長協定」により、ヨーロッパは技術革新、教育および職業養成を促進させ、国民経済政策の専門家を一層緊密な協調へと導き、構造改革を推進させなくてはならない、と述べた。大統領はまた、ドイツが国連の安全保障理事会の常任理事国に就任することを支持すると述べた。

原題:Chirac fuer verstaerkte Zusammenarbeit in EU-Avantgarde