2005年5月22日(日)11:48
プラハ/ミュンヒェン(AFP)
フランスのEU憲法国民投票を数日後に控えて、チェコのヴァーツラフ・クラウス大統領はあらためてEU憲法に反対の意向を表明した。加盟国がますます権限を欧州連合に委譲すれば、欧州市民の自由が脅かされる。EUの政治エリートがこれほど欧州市民から離れたことはいまだかつてない、とクラウスはドイツの『フォーカス』誌Focusに語った。クラウス大統領は2003年にヴァーツラフ・ハヴェル前大統領の後を継いで大統領に就任した。「私は今日の状況を非合理性の兆候と解釈している。」
同誌の報道によれば、クラウス大統領はEUの外交政策や税率調整などの共通政策に反対しているという。「欧州は政治的統一体ではない。したがって、共通の外交政策を持ち得ないのは理の当然である」。EU憲法は欧州統合の促進と深化をはかる試みである。だがそれには「マルクス主義の必然性もなければ弁証法的論理」もない。「今や私たちは闇の中へと飛び込んだ。つまり政府間主義Intergovernementalismus(国家間主義 Zwischenstaatlichkeit =原注)から超国家主義Supranationalismusへの転換だ」、と大統領は語った。
さらにクラウス大統領は、EU憲法をめぐる論議はEUとは何の関係もないと述べた。「誰もEUの鍵を持っているわけではない。欧州委員たちはその鍵を手に入れたがっている。だが私たち欧州人は彼らにこの鍵を決して、断じて、渡してはならないのだ。」東欧諸国は西欧企業を誘致するために税率のダンピングを行っているとのドイツの批判に対して、クラウス大統領は、チェコの税率はむしろまだ高いと発言した。「私たちは今日の世界で行き抜くためには税率を下げる必要がある」。チェコは自らの欧州への帰属を確認するためにEUに加盟したわけではない、と大統領は述べた。
原題:Tschechischer Praesident lehnt EU-Verfassung ab
訳注:クラウス大統領は、前任者のハヴェル大統領とは異なり、EU懐疑論者として知られる。すでにチェコのEU加盟前の2003年7月15日に、自国のEU加盟に警告を発し、EU憲法を否定する発言を行っている。また欧州憲法を協議した同年12月16日のEU首脳会議が決裂したことについては「大きな勝利」と論評している。クラウス大統領のEU憲法批判はこの他に今年3月14日や4月4日のニュースでも報じられている(同日の「機構改革」のニュースを参照)。