2009年5月27日(水)16:34
ベルリン(AP)
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は欧州連合の分裂に警鐘を鳴らした。「私は欧州を分断する考えには与しない」と首相は水曜日、ベルリンのフンボルト大学で行われたEU政策に関する基調講演で述べた。首相は、二つの統合速度のEUという考えも、ユーロ加盟国が経済政策で指導的な役割を果たすという考えも退けた。
単一の域内市場は欧州連合の基盤である。それゆえ加盟全27ヶ国の財務大臣による理事会が経済政策において決定的な役割を果たさねばならない、とメルケル首相は語った。「数ヶ国による先行統合は常に全加盟国の承認を必要とする」と首相は強調した。また外交政策においても、2003年のイラク戦争の時のような分裂に至らないよう警告した。
しかしメルケル首相はドイツとフランスをEUの推進力と見ている。「今なお、ドイツ・フランスの共同イニシアティブは、EUが一致して前進するための最高の保証になっている。」
メルケル首相は、速やかなEU拡大に対してはあらためて反対の意向を表明した。たとえば西バルカン諸国は加盟展望を保持しなくてはならない。だが、数多くの中東欧諸国が加盟した今、EUの行動能力を回復させる必要がある。それにはEU諸機構の改革を定めたリスボン条約の批准が不可欠なのである、と首相は主張した。
メルケル首相はEU加盟国に対して、リスボン条約の今年末の発効に向けて批准を急ぐよう呼びかけた。「また私たちにはそれができるものと信じている」。私は1回目の国民投票で条約批准を否決したアイルランドも批准を承認すると考えている、と首相は述べた。
メルケル首相はドイツが「EUの拠出大国」であるという思い込みを否定した。首相は、確かにEU加盟による負担はドイツの国民1人当たり年間263ユーロにのぼる。しかし一方でドイツは加盟国の平均以上にEU域内市場の恩恵を受けている。さらに還元される額もある。ドイツ東部はこの6年間で290億ユーロの構造改革援助を受けている。「私たちが何かしら支払い過ぎているという解釈には私は与しない」、と語った。
メルケル首相の演説中、およそ10人の学生がシュプレヒコールと横断幕で教育分野の財政支出削減に抗議した。学生らは6月中旬にドイツ全土で教育機関のストを呼びかけた。メルケル首相は演説でもその後の質疑応答でもこの抗議に言及しなかった。
原題:Merkel warnt vor Spaltung Europas