2009年11月20日(金)13:13
ブリュッセル(AP)
驚くべき昇進である。ヘルマン・ファンロンパウ首相はベルギーの首相に就任してわずか11ヶ月足らずで、欧州連合のトップの座に就くことになった。62歳のキリスト教民主系の政治家は、初代EU常任議長(大統領)として、EU改革リスボン条約発効後のEUを新たな時代へと導く。
「ヘルマン誰だって?」とアメリカのABCニュースは金曜日に伝えた。というのも、これまでファンロンパウ首相は国際的な舞台にほとんど登場していないからである。首相はブリュッセルでも、アメリカのバラク・オバマ大統領が本当に話し相手と認めてくれると思うかという意地の悪い質問を受けねばならなかった。しかしファンロンパウ首相は当意即妙に、「私はいまから最初の電話がとても楽しみにしている」と皮肉を込めて答えた。
実際ファンロンパウ首相はEU常任議長として、今後首脳会談の席でオバマ大統領あるいはロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領に対してEUを代表する役割を負う。しかしファンロンパウ首相の役割はむしろ象徴的なものになるだろう。というのも本来の外交関係の構築は今後、次期EU外相のキャサリン・アシュトン欧州委員の管轄となるからである。
EU常任議長の仕事はとりわけ内部に向かう。主な任務は、27加盟国の首脳が出席するEU首脳会議の運営である。ドイツのアンゲラ・メルケル首相やイタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相のような様々な顔ぶれの集うクラブをひとつにまとめることは、たいへんな外交手腕が要求される。
ファンロンパウ首相は木曜日の晩、任命を受けて、私はバランスの議長となるつもりだと述べた。「どの国も交渉の結果に満足できるよう」、「議長として私はすべての加盟国の意見によく耳を傾け、誰もが受け入れられるような結果を導くべく努力する」と首相は語った。
ファンロンパウ首相はベルギーの言語戦争で仲裁者としての能力を証明している。オランダ語のフラマン系住民とフランス語のワロン系住民の争いは解決にこそ至っていないものの、首相の任期中はずっと鎮静化した。ファンロンパウ首相自身はフラマン系であるが、フランス語のメディアからも公平な交渉相手と評されている。
ファンロンパウ首相は自らの最も重要な性格として謙譲をあげた。新たな職務でもこれを忘れないつもりだ、と首相は木曜日の晩に語った。しかし集まった新聞記者からは失望の声が上がった。「ファンロンパウ首相が口を開くのは呼吸をするときだけだ」とベルギーの新聞は最近皮肉混じりに報じた。
ファンロンパウ首相は自らの感情を筆に託す。首相は定期的に俳句を作っているのである。最近の一句:「水たまり 温みを待ちて かすみけり」*。これは11月7日に自らのウェブサイトに載せたものである。ひょっとしたらすでにこの時、自らが最も高い政治圏へ立ち昇ることを夢見ていたのかもしれない。
原題:Van Rompuy will ein Praesident des Ausgleichs sein
*訳注:AP通信の独語訳では Pfuetzen warten/auf Waerme um zu verdampfen/Wasser wird eine Wolke。
ファンロンパウ首相のウェブサイトhttp://hermanvanrompuy.typepad.com/haiku/に掲載されたオランダ語の原詩は、Plassen wachten op warmte om te verdampen. Water wordt een wolk.
五七五に合わせるため、訳では多少原詩の意味を犠牲にしている。