2004年10月8日(金)20:30
パッサウ(AP)
ドイツのホルスト・ケーラー大統領は拡大後の欧州連合に対して、共通の外交安全保障政策の構築を呼びかけた。「共同してこそ私たちは自らの利益をよく守ることができるのだ」と大統領は金曜の晩、パッサウで開かれたドイツ・ポーランドフォーラムの席で述べた。私は欧州が国連で一つの声で意見を表明するよう望む。EUは世界のどこでも人間の尊厳と民主主義のモデルにならねばならない、と大統領は語った。ポーランドのアレクサンデル・クファシニェフスキ大統領は、第二次世界大戦で故郷から放逐されたドイツ人に対して、ポーランドに対する補償要求を控えるよう呼びかけた。
ケーラー大統領は、共通の外交政策をとる欧州はアメリカ合衆国の対立モデルと捉えられてはならない。これは安全保障政策の競争でもない、と説明した。「競争は危険で愚かだ」。EUはアメリカに対して「対抗的ではなく協力的に」その力を発揮せねばならない、と大統領は主張した。
5ヶ月前のEUの東方拡大についてケーラー大統領は、「欧州は完全ではなかった。片肺で呼吸していたのだ」。新規10ヶ国の加盟による25ヶ国への拡大は「新たな推進力や新たな考え、刺激をもたらすだろう」。政治的統一の実行にはまだかなりの時間を要する。新規加盟国が望んだ経済の飛躍的発展は自らの努力によってのみ達成できる。ドイツなどの実質負担国の力には限界がある、と語った。
ポーランドのアレクサンデル・クファシニェフスキ大統領は、EU拡大はポーランドとドイツの隣国関係の性格を変える。両国関係は目下「距離を置いた近さ」が際立っている。「私たちの協力関係はいつも、傷つきやすい植物のようなもので、丈夫な根やしっかりと支える幹を持たない樹のようなものだ」、と述べた。
クファシニェフスキ大統領は、ポーランドとドイツ両国民はもはやかつてヴィリー・ブラント首相がワルシャワでひざまずいたような行為*)を必要としない。大事なのは「日常の出会い」なのだ、と語った。ドイツの故郷放逐者による保証要求について大統領は、「過去の請求書」を持ち出すことは阻止されねばならない。「過去に起きたことはいつかは片付けねばならないのだ」、と述べた。
パネルディスカッションの席で、この故郷放逐の問題をクファシニェフスキ大統領と一対一で討議したケーラー大統領は、放逐ドイツ人の運命に関する議論を「過去の傷を再び開かぬような雰囲気の中で」続けることを支持した。
ケーラー大統領は、EUは欧州憲法により「新たな統合レベル」に到達できるとの見解を表明した。「将来はどこの国の人であれ、自らの権利を等しくEUレベルでも主張できるようにすべきである」。大統領は欧州連合のこれまでの拡大を踏まえ、憲法条約は「差し当たりの終点となる。少なくとも当分の間は」と述べた。またトルコとの加盟交渉を結果を約束しない形で行なうことにも賛成の意向を表明した。「私たちは、獲得した成果が次のステップで危うくならないという保証が必要である」。欧州を「分裂するまで延ばしては」ならない、と大統領は主張した。
原題:Koehler plaediert fuer gemeinsame Aussenpolitik der erweiterten EU
*)訳注:1970年12月、西ドイツのヴィリー・ブラント首相はポーランドを訪問し、ワルシャワのゲットー慰霊碑の前でひざまずいた。この行為はそれまで国交の途絶えていたポーランドと西ドイツの融和の契機となった。