2009年10月9日(金)18:18
AFP
チェコのヴァーツラフ・クラウス大統領はEU改革リスボン条約に対する抵抗の理由について、財産を剥奪されたズデーテンドイツ人による返還要求の恐れがあるためとはじめて明らかにした。現時点ではリスボン条約の一部を成すEU基本権憲章がチェコの法律をすり抜ける恐れがある、とクラウス大統領はプラハで語った。それゆえ我が国は例外条項を求めると大統領は主張した。
「批准の前にチェコは例外に関する交渉を行う必要がある」。さもないと、第二次世界大戦の結果の財産剥奪に対する返還要求が欧州裁判所によって認められる可能性がある。私は基本権憲章が1945年と1946年の布告*)に異を唱えることを懸念している、と欧州統合懐疑論者として知られるクラウス大統領は語った。この布告の後、およそ250万人のズデーテンドイツ人が当時のチェコスロヴァキアから放逐され、財産を没収された。
クラウス大統領はこの発言により、ポーランドのジェチポスポリタ紙Rzeczpospolita の報道を裏付けた形となる。同紙は大統領の腹心の言葉を引き、たとえば「私たちの地域の歴史を無視する」マルタやスペイン出身の欧州裁判所の裁判官が、ズデーテンドイツ人の財産返還を認めるか否かを決定するのは到底受け入れがたい、と大統領の批准拒否の理由を報じていた。
ヨー・ライネン欧州議員はブリュッセルで、EU各国首脳はチェコに対し「政治的な意向声明」を決議し、基本権憲章がチェコには適用されないと明記することはできると述べた。そのようなEU首脳会議の意向声明があれば、理論的には今年末までの条約発効の道が開けるとライネン議員は語った。
欧州議会のイェジ・ブゼク議長も、これに先立ちクラウス大統領と会談し、今後の条約批准について明るい見通しを示した。しかし私はクラウス大統領に、例外条項を求めるなら他の加盟全26ヶ国の承認が必要となると伝えた、とブゼク議長は語った。
リスボン条約では2000年に調印されたEU基本権憲章にはじめて法的拘束力が与えられた。ポーランドとイギリスは例外規定を獲得した。たとえばポーランドは決議の際に、同性愛に対するポーランドの法律が不可侵であるとの保証を得ている。イギリスは欧州裁判所の決定が自動的にイギリスの法律を侵さぬよう保証させた。
アイルランド国民投票によるリスボン条約批准承認、ならびに土曜日に予定されるポーランドのレフ・カチンスキ大統領の批准文書署名とそれによる最終的な批准完了の後は、条約の批准を終えていない国はチェコ1ヶ国のみとなる。
原題:Klaus fordert Ausnahmeklausel im EU-Vertrag
*)訳注: 1945年以降のズデーテンドイツ人強制移住の法的基礎となったいわゆるベネシュ布告を指す。
一連の布告のうち、「チェコ人およびスロヴァキア人の自由の回復をめぐる闘いに関係する行動の合法性に関する1946年5月8日の法律」(公布は同年6月4日)は、「1938年9月30日から1945年10月28日までに行われたチェコ人とスロヴァキア人の自由の回復をめぐる闘いに寄与することを目標とする行動、あるいは占領者またはその支援者の行為に対する正当な報復を目標とする行動は、たとえ他の現行規定で違法とされている場合でも違法としない。」(第一条)と定め、ドイツ人に対する犯罪的行為(殺害や放逐)を合法的としている。
このベネシュ布告の問題は常にチェコとドイツの間にくすぶり続け、チェコのEU加盟国民投票(2003年6月)の前後にも大きな論争に発展した。(本ホームページ「EUの東方拡大」2003年5月から6月のニュースを参照)