2009年10月30日(金)12:47
ブリュッセル(AP)
欧州連合の改革を定めたリスボン条約は最後の政治的ハードルを越えた。EU各国首脳は木曜日の晩ブリュッセルで開かれた首脳会議の席で、チェコのヴァーツラフ・クラウス大統領の求める追加要求を承認した。チェコ大統領府のジリ・ヴァイグル長官は、クラウス大統領は交渉結果を「非常に良い」と評価している。チェコの憲法裁判所がEU改革条約をチェコの憲法に合致していると判断すれば、クラウス大統領は条約に署名するだろう、と語った。
クラウス大統領は数年がかりのEU改革案を、リスボン条約に含まれるEU基本権憲章が第二次大戦後にチェコスロヴァキアから追放されたズデーテンドイツ人によるかつての財産返還要求に道を開く恐れがあるとの理由で阻止していた。EUの法律専門家からはナンセンスと位置づけられる、しかし政治的には大きな波紋を呼んだこの警告によって、クラウス大統領はEUに圧力をかけることに成功した。大統領自身は出席していなかったにもかかわらず、首脳会議の出席者の念頭には常に大統領の姿が浮かんでいた、と出席者サイドは伝えている。
クラウス大統領の呼び起した懸念を払拭するため、EUはチェコに対してEU基本権憲章の適用除外を認めた。チェコにはポーランドとイギリスと同じ特例の適用が認められる。両国はすでに2年前、条約の文言検討の際に例外規定を獲得している。ポーランドとイギリスに対する付帯条項では、両国の国民は自国の法体系に定められていない権利については、基本権憲章を楯に訴えを起こすことはできないとされている。
今回の首脳会議の決定後、チェコに対してもこの付帯条項が適用されることになる。しかし公式的には、リスボン条約がたとえば次期EU拡大の際など修正の必要が出たときに、この修正条項が条約に付帯されることになる。こうした細工により、この2年間、加盟全27ヶ国で苦心惨憺の末に完了した批准手続きを一からやり直すことが避けられる。もしそのような事態になれば、ドイツやオーストリアのみならずハンガリーでも、クラウス大統領の投げかけた放逐問題に関する議論が間違いなく再燃していたことであろう。第二次大戦後、300万人のズデーテンドイツ人のほか、60万人のハンガリー系少数民族も当時のチェコスロヴァキアから追放されたからである。
欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長は木曜日の晩、8年前の欧州憲法会議の招集に始まった改革プロセスは「マラソン、それもハードル付きのマラソン」のように思えると溜息をついた。しかしEUにはまだ法的ハードルが残っている。来週火曜日にチェコ憲法裁判所によるリスボン条約の憲法判断が下りるからである。
合憲判断が下りれば、リスボン条約で創設されるEU首脳ポストをめぐる議論も勢いを増すことになろう。オーストリアのヴェルナー・ファイマン首相は金曜日、「クラウス大統領が署名すれば、速やかに私たちの行動能力を示す必要がある」と語った。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相も、クラウス大統領の署名後は速やかに人事問題を解決するよう期待している。メルケル首相は新設のEU常任議長(大統領)およびEU外交上級代表について、首脳会議の席では意中の候補者を明かしていない。いずれにせよ、イギリスのトニー・ブレア前首相はEU常任議長レースから脱落した。労働党所属のブレア前首相は、左派のEU加盟国首相からも支持を得られなかった。
原題:EU-Reform nimmt letzte politische Huerde